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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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第59話 当主

 恒一は湯呑みを置いた。


「一つ気になったんだけどさ」


「何だ?」


「当主って、倒したら交代なんだろ?」


「ああ」


「じゃあ、当主争いって頻繁に起きるのか?」


 玲は首を横へ振る。


「いや」


「ほとんどない」


「そうなのか?」


「ああ」


「冬埜家は、一族の存続を何より優先する」


「実力者同士で潰し合えば、一族全体が弱くなる」


「だから、一族同士では基本的に争わない」


 玲は静かに続ける。


「それに」


「私たちには、もっと大きな敵がいる」


「獄蓮会だ」


「何百年も前から、冬埜家は獄蓮会の支配下に置かれてきた」


「逆らえば、一族ごと消される」


「だから、本家も分家も関係ない」


「一族全員で生き残ることを最優先にする」


 恒一は静かに頷く。


「なるほど……」


「だから結束が強いのか」


「ああ」


「外には極端に排他的だ」


「でも、一族の中では助け合う」


「本家も分家もない」


「みんな冬埜家だ」


 玲は少し考えてから続けた。


「だから、当主争いも少ない」


「現当主が」


『自分より強い』


『自分より一族を導ける』


 そう判断すれば、自ら当主の座を譲ることも珍しくない」


「え?」


 恒一は思わず目を丸くした。


「戦わないのか?」


「無意味だからな」


「冬埜家に必要なのは」


「勝った者じゃない」


「一番強い者だ」


「だから」


「一族のためになるなら、当主が自分から退くこともある」


 恒一は感心したように息を吐いた。


「思ってたより……ずっと合理的なんだな」


 玲は苦笑する。


「そうだな」


「呪われてはいるが」


「馬鹿な一族じゃない」

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