58/115
第57話 離れない
休日。
朝から玲は恒一の後ろを付いて歩いていた。
リビング。
キッチン。
洗濯物を干す時も。
少し離れると、すぐ後ろから付いてくる。
恒一は苦笑した。
「玲」
「何だ?」
「今日はずっとくっついてるな」
玲は少しだけ俯く。
「……離れたら」
「こういちがいなくなる気がする」
恒一は何も言わず玲を見る。
玲は小さく尋ねた。
「見捨てない?」
恒一は優しく笑う。
「ああ」
「見捨てない」
その一言だけだった。
玲は少しだけ目を潤ませる。
「……うむ」
そう答えると、また恒一の隣へぴたりと寄り添った。
恒一は苦笑する。
「結局くっつくんだな」
玲は照れ隠しのように鼻を鳴らす。
「命令だ」
「今日は離れるな」
「はいはい」
恒一は笑いながら頷いた。
玲は安心したように、小さく肩を預けるのだった。




