第46話 待つ
夕方。
恒一は仕事。
玲は一人、家でゲームをしていた。
「……」
画面を見る。
時計を見る。
ゲームへ戻る。
また時計を見る。
「遅い」
今日はいつもより帰りが遅い。
ゲームも、何となく集中できなかった。
「……」
もう一度時計を見る。
「遅すぎる」
玲はソファへ寝転がり、腕を組んだ。
「もし私を置いて遊んでたら……」
「殺す」
「本当に殺す」
そう呟いてみる。
けれど、自分でも分かっていた。
こういちは、そんなことをする人間ではない。
それでも落ち着かない。
夕飯の時間になっても、一人では食べなかった。
「腹減った……」
テーブルには、料理が並んでいる。
今日は玲が作った夕飯だった。
「早く帰ってこい……」
その時。
ガチャ。
玄関の扉が開いた。
「ただいま」
玲は勢いよく立ち上がる。
「遅い」
恒一はネクタイを緩めながら苦笑した。
「悪い悪い」
「残業だよ」
「関係ない」
玲はそっぽを向く。
少しだけ黙ってから、小さな声で呟いた。
「……少し心配した」
恒一は目を丸くする。
「心配?」
「そうだ」
「遅かったからな」
照れ隠しなのか、玲は話題を変えるように台所を指差した。
「今日は」
「私が作った」
恒一はテーブルを見る。
少し不格好だが、ちゃんと料理が並んでいた。
「おお」
「すごいじゃないか」
玲は鼻を鳴らす。
「これなら」
「早くゲームできるだろ」
恒一は思わず笑った。
「結局それか」
「ああ」
「早く食べろ」
「今日は私が勝つ」
「もう勝ち負けしか頭にないな」
「当然だ」
二人は向かい合って夕飯を食べ始める。
玲は何度も恒一の方をちらりと見た。
ちゃんと帰ってきた。
それだけで、どこか安心している自分がいた。




