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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus


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第43話 後ろ

 夕食の支度。


 玲はキッチンに立ち、教わった通りに野菜を切っていた。


 包丁を握る手つきも、最初よりずっと様になっている。


「玉ねぎは、そのくらいでいいぞ」


「分かった」


 恒一は冷蔵庫から調味料を取り出そうと、玲の後ろを横切る。


 ――すっ。


 何も起きない。


 玲はそのまま包丁を動かし続ける。


 恒一は思わず立ち止まった。


「あれ?」


 玲が振り返る。


「何だ?」


「いや……」


「最近、後ろに立っても怒らないな」


 玲は少し考える。


「ああ」


「気にならなくなった」


「え?」


 恒一は少し驚いた。


「前は毛布を掛けようとしただけで、殺されかけたのに」


「あの頃はそうだったな」


 玲は包丁を置く。


「でも今は違う」


「こういちは弱い」


「私を殺す度胸もないし、殺せない」


 恒一は苦笑した。


「それって……」


「信頼してくれてるってことか?」


 玲は一瞬だけ固まる。


「違う!」


「調子に乗るな!」


「……殺すぞ!」


「はいはい」


 恒一は笑いながら鍋を火にかける。


 玲は少しだけ頬を膨らませ、再び野菜を切り始めた。


 だが、包丁を動かしながら考える。


(……違うのか?)


 昔なら。


 誰かが背後へ立った瞬間、反射で刃を向けていた。


 それが当たり前だった。


 けれど今は。


 こういちが後ろを歩いても、身体は動かなかった。


 自分でも、その変化が少し不思議だった。


 玲は小さく首を傾げる。


「……変だな」


 その呟きは、恒一には聞こえなかった。

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