第40話 隣
休日の昼下がり。
テレビでは、お笑い番組が流れていた。
恒一はソファへ腰を下ろし、ぼんやり画面を眺めている。
すると、隣で寝転んでいた玲が口を開いた。
「こういち」
「何だ?」
「隣座れ」
「何で?」
「いいから」
恒一は苦笑する。
「理由くらい言えよ」
玲は腕を組んだ。
「私の命令に逆らうな」
「……殺すぞ」
「はいはい」
恒一はため息を吐きながら、玲のすぐ隣へ腰を下ろした。
「これでいいか?」
「ああ」
玲は満足そうに頷く。
二人は並んでテレビを見る。
何も話さない。
ただ同じ番組を眺めているだけだった。
しばらくして、恒一が笑う。
「ははっ」
玲は画面と恒一を見比べる。
「面白いか?」
「まあな」
「そうか」
それだけ言うと、玲も再びテレビへ視線を戻した。
沈黙は続く。
けれど、不思議と気まずくはなかった。
ただ、隣にいる。
それだけで玲は満足そうだった。
番組が終わる頃、玲がぽつりと口を開く。
「こういち」
「何だ?」
「お前」
「ちっとも私のことを名前で呼ばん」
恒一は苦笑した。
「そう言われてもな」
「今までずっと『お前』だったから」
「急には慣れないんだよ」
玲は少しだけ頬を膨らませる。
「慣れろ」
「命令だ」
「そんな命令あるか」
「ある」
玲は恒一をじっと見つめる。
「呼べ」
「今か?」
「ああ」
恒一は頭を掻き、少し照れ臭そうに口を開いた。
「……玲」
玲は満足そうに小さく頷く。
「うむ」
「よろしい」
「許可したのは私だからな」
「はいはい」
恒一は苦笑する。
「相変わらず偉そうだな」
「当然だ」
玲は小さく鼻を鳴らした。
「ふん」
その横顔は、どこか嬉しそうだった。




