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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus


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第25話 一日一時間

 それからというもの。


 夕食を食べ終えると、玲は決まってテレビの前へ座るようになった。


「ゲームやるぞ」


 それが毎晩の合図だった。


 ただ一つだけ変わらないことがある。


 玲は――まだ一度も勝てていなかった。


「また負けた……」


「惜しかったな」


「次だ」


 何度負けても諦めない。


 それでも、勝てない。


 ある日。


 夕食を食べ終えた玲は、いつものようにコントローラーを手に取る。


「ゲームやるぞ」


 恒一は時計を見ながら言った。


「一時間な」


「嫌だ」


「駄目」


「もっとやる」


「命令するな」


「それはこっちの台詞だ」


 玲は頬を膨らませる。


「もっと遊ぶ」


「お前のゲームに付き合ってたら、弁当作れないんだよ」


「弁当……」


「洗濯もあるし、風呂掃除もある。やることがあるんだ」


 玲は少し考え込む。


「……」


 恒一は笑った。


「家事を手伝ってくれるなら、その分、もっと遊んでもいいぞ」


 玲はすぐに顔を上げる。


「手伝う」


「即答かよ」


「うむ」


「皿洗いも」


「やる」


「洗濯物を畳むのも」


「やる」


「掃除も」


「やる」


 恒一は苦笑する。


「……こいつ、変なところは素直なんだよな」


「何か言ったか?」


「いや、何でもない」


 その日もゲームが始まる。


 玲はいつも以上に真剣だった。


「今日は勝つ」


「お、いい意気込みだ」


 対戦開始。


 玲は必死に攻撃を繰り出す。


 少しずつ覚えたコンボ。


 タイミング。


 ガード。


 そして――。


K.O.


「勝った!」


 玲は勢いよく立ち上がる。


「やった!」


 思わずガッツポーズを決める玲を見て、恒一は笑った。


「おめでとう。初勝利だ」


「うむ!」


 玲は満面の笑みで何度も頷く。


 たった一勝。


 それだけなのに、世界を獲ったような笑顔だった。


 その姿を見ながら、恒一は思う。


「……まあ、一日一時間くらいなら悪くないか」


 二人の夜は、今日も賑やかだった。

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