SS 第6話 強すぎる新人
ゲーム開始のブザーが鳴る。
参加者たちは一斉にフィールドへ散っていく。
玲も静かに駆け出した。
その瞬間。
玲の世界がゆっくりと動き始める。
認知が加速する。
飛来するBB弾を見つめる。
(遅い)
実弾とは比べ物にならない。
(これなら当たらんな)
玲は身体をわずかに傾ける。
BB弾は頬の横をかすめ、そのまま通り過ぎていった。
反射だけで動く。
遮蔽物を使う。
索敵。
足音。
気配。
死角。
全てが、身体に染み付いていた。
「ヒット!」
「ヒットー!」
敵が次々と脱落していく。
玲は音もなく背後へ回り込む。
サバゲー用のラバーナイフを相手の背中へ軽く当てた。
「ナイフキルです」
「えぇっ!?」
相手は驚きながら笑って両手を上げる。
「ヒット!」
さらに一人。
また一人。
気付けば敵チームは次々と人数を減らしていた。
玲はそこでようやく我に返る。
(……はっ)
(しまった)
(やりすぎた)
(元殺し屋だと疑われる)
慌てて動きを少しだけ鈍らせる。
しかし、時すでに遅し。
ゲーム終了のブザーが鳴った。
参加者たちはセーフティーエリアへ戻ってくる。
玲は静かに俯く。
(終わった)
(流石にバレた)
すると、一人の男性が笑顔で近寄ってきた。
迷彩服姿。
今日参加していた自衛隊員だった。
(この人には分かる)
玲は覚悟を決める。
しかし――。
「お嬢ちゃん!」
「はい」
「すごい!」
「めちゃくちゃすごい!」
玲は目を丸くした。
「動きが速すぎる!」
「忍者かと思ったよ!」
周囲から笑いが起こる。
「確かに!」
「忍者だ、あれは!」
自衛隊員は感心したように頷いた。
「うちの隊でも、あんな動きができる人はなかなかいないよ。」
「よかったら今度、教えてほしいくらいだ!」
玲は固まった。
(……え?)
(怒られない?)
(疑われない?)
(褒められてる?)
周囲からも次々と声が飛ぶ。
「新人でこれは反則だろ!」
「才能あるな!」
「どうやって弾を避けてるんだよ!」
「ナイフキルまで決める新人なんて初めて見た!」
「また来いよ!」
「今度は同じチームになろう!」
玲は目をぱちぱちと瞬かせる。
生まれて初めてだった。
戦う技術を見せても、恐れられない。
人を傷つけるためではなく、遊びを楽しむ技術として称賛される。
玲は少しだけ照れくさそうに頬を掻いた。
「……まあ」
短く答えると、周囲から笑いが起きた。
その日。
朝霧玲は初めて、表の世界で戦う才能を褒められた。




