SS 第5話 サバゲー
ミリタリーショップを出た帰り道。
ひよりが思い出したように声を上げた。
「あっ、そうだ!」
「私、サバゲーサークルに入ってるんだ!」
玲は首を傾げる。
「サバゲー?」
「さっき見たエアガンを使って遊ぶスポーツ!」
「今日ちょうどイベントの日なんだ!」
ひよりは玲の腕を軽く引っ張る。
「玲ちゃんも来ない?」
玲は少し考えて答えた。
「……いや、いい」
「えー!」
ひよりは頬を膨らませた。
「絶対楽しいよ!」
「それに、玲ちゃん私と同じくらいの身長だから装備も入ると思う!」
「何着か持ってるから貸したげる!」
そこまで言われると、断る理由も見つからない。
玲は小さく息をついた。
「……分かった」
「やったー!」
ひよりは満面の笑みを浮かべた。
そのまま二人はサバイバルゲームフィールドへ向かう。
受付の前には、大勢の参加者が集まっていた。
会社員らしき男性。
大学生。
女性同士のグループ。
年配の参加者もいる。
さらにスタッフが声を上げる。
「今日は自衛隊の方も参加されています!」
玲は周囲を静かに見回した。
(本当に普通の人ばかりだ)
誰も殺気を放っていない。
楽しそうに笑いながら準備をしている。
ひよりから迷彩服と装備を借り、玲も着替えを済ませた。
「玲ちゃん、すっごく似合ってる!」
「……そうか?」
「うん!」
照れくさそうに答える玲を見て、ひよりは嬉しそうに笑う。
やがてスタッフによるルール説明が始まった。
「撃たれたら『ヒット!』と自己申告してください!」
「ヒットしたら、その時点でゲーム終了です!」
「絶対に撃ち返さないでくださいね!」
玲は真剣な表情で説明を聞く。
(撃たれても死なない)
(勝っても誰も死なない)
(負けても誰も恨まない)
そんな戦いが、この世界にはある。
玲は小さく呟いた。
「……優しい世界だ」
その言葉を聞いたひよりは、不思議そうに首を傾げた。
「玲ちゃん?」
「……いや、何でもない」
そして、人生初めてのサバイバルゲームが始まろうとしていた。




