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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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SS 第1話 入学式

 四月。


 暖かな春の日。


 玲は定時制高校の校門の前に立っていた。


 真新しい制服。


 新品の通学かばん。


 まだ履き慣れないローファー。


 どれも、生まれて初めて身に付けるものだった。


 制服の袖を見つめ、小さく呟く。


「……やっぱり慣れないな」


 少しだけ動いてみる。


「動きにくい」


「これじゃ戦いになったら――」


 そこまで口にして、玲ははっとする。


「……違う」


 小さく首を横へ振った。


「もう、私は普通の人間なんだ」


 誰かと戦うことなんて、考えなくていい。


 そう思うと、どこか胸の奥が温かくなった。


 ふと、お父さんの言葉を思い出す。


『可愛いぞ。よく似合ってる』


 その一言が、不思議と背中を押してくれる。


 玲は校門の向こうへ目を向けた。


 同年代の生徒たちが笑い合いながら校舎へ入っていく。


「久しぶり!」


「同じクラスだといいね!」


 楽しそうな声が、あちこちから聞こえてくる。


 玲はその場に立ち尽くした。


(どうすればいい)


(普通って、何だ)


(……お父さん)


(助けてくれ)


 心の中で小さく呟く。


 もちろん、返事はない。


 玲は深く息を吸い込み、小さく頷いた。


「……よし」


 勇気を出して、一歩踏み出す。


 こうして。


 朝霧玲の、高校生活が始まった。

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