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おっさん、殺し屋少女と家族になる  作者: Atelier Lotus文庫


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エピローグ 新しい春

 それから一年後。


 玲は定時制高校への進学を目標に、勉強を続けていた。


 これまで十分な教育を受ける機会はなかった。


 それでも。


 恒一と一緒に机へ向かい、一つずつ問題を解き、少しずつ学んでいく。


 分からないことは、何度でも聞く。


 できるようになるまで、何度でも挑戦する。


 そして迎えた、受験当日。


 玲は最後まで諦めることなく答案を書き終えた。


 それから数週間後。


 合格発表の日。


 高校の掲示板には、合格者の受験番号が並んでいた。


 恒一は受験票を手に、番号を探す。


「玲の番号は……」


 上から順番に目で追っていく。


「……ない」


 もう一度見る。


 一つずつ。


 落ち着いて確認する。


「……ないのか」


 その時だった。


「あった!」


 思わず声が響く。


「玲!」


「番号あったぞ!」


 玲は慌てて掲示板へ駆け寄る。


 震える指で番号をたどる。


 そして。


「……あった」


 そこには確かに、自分の受験番号があった。


 玲はしばらくその番号を見つめ続ける。


 やがて、瞳に涙を浮かべ、小さく笑った。


「……受かった」


「ああ」


「合格だ」


 恒一は心から嬉しそうに笑う。


「やったな」


「玲も四月から高校生だ」


 玲は照れくさそうに笑いながら頷く。


「ああ」


「私、高校生になるんだな」


 裏社会で生きるしかなかった少女は、もういない。


 四月からは、一人の高校生として。


 一人の娘として。


 新しい毎日を歩き始める。


 その未来には、もう命令も、銃声も、血の匂いもない。


 あるのは。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


 そんな、どこにでもある朝。


 朝霧玲が手に入れたのは、特別な人生ではない。


 誰もが当たり前に過ごしている、穏やかな日常だった。


 そして、それこそが――


 彼女が、ずっと手に入れたかった幸せだった。

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