第07話 最強コンビ
「ここじゃない気がする。うまく言えないなけど、心に響かない」
『宍道湖』を見ながら、申し訳なさそうな顔でノブが呟いた。
「俺が目指すところなんて、本当はどこにもないんじゃ・・・」
その先の途中で寄った『中海』での反応も同じようなものだった。
「気にすんな。お前、海は行ったか?」
「いや行ってない。もちろん海は知ってるが」
「そうか、じゃあ海へ行ってみよう」
ノブと一緒の旅は本当に助かった。
なんたって、俺には旅猫としての経験値が圧倒的に足りない。RPGで言えば、ゴン爺先生によるチュートリアルを経て、やっと城下町へ出たザコキャラだ。ゴン爺に数日教えてもらっただけの頭でっかちな俺とは違い、ノブには旅猫としての経験があった。
野山へ行き、俺が小動物を追い立て、ノブが狩る。
川にはノブが平気な顔で入り、熊が鮭を捕るような格好でおもいっきり魚を岸まで飛ばし、俺が押さえる。
俺も自分では相当すばしっこいと思っていたが、ノブも負けず劣らずだ。回数を重ねる毎に、俺たちのコンビネーションはどんどんスムーズになっていった。
「ミー助、俺一匹のときより断然効率がいいっ!」
「ノブ、俺たちのコンビは最強だぜっ!」
獲物を食べながら、一緒に笑う。
「俺は今までずっと目的もないまま、ただ流れてきた。もちろん友達なんてできたことがなかった。でも、今はお前もいるし、楽しいよ」
目的を持って生きている猫なんてそうそういないさ。『せっかく生まれてきたんだから、その命を全うするまで強く楽しく生きるんだ』 父さんと母さんに言われた言葉をノブに教えてやった。まっ、正確には母さんの言葉を父さんがそのままなぞっただけだけどね。
海にほど近い、夜の草むら。
「変な匂いがする」
「これが潮の香りだよ」
「低い音が繰り返している」
「波の音、潮騒だよ」
「早く海に行きたいよ」
「明日の朝までお預けだ」
夜の海は危険だ。それに初めて海を見るんじゃ明るい時のほうがいい。興奮気味のノブをなだめて、俺たちは眠りについた。




