第04話 流れ猫の心得
『尻尾盗り』は、ミー助が考えた勝負。二匹が向かい合ってスタートし、相手の尻尾を前足で叩いたら勝ちという単純なルール。20xx年にネコリンピックが開催される時には正式種目に採用されるらしい。
人間に必要不可欠なものは『衣食住』だと言うが、裸の猫に『衣』は必要ない。近頃じゃ、服を着たり寒がりな犬もいるようだが、俺に言わせれば情けないったらありゃしない。そして、これから流れようという猫にとって『住』はもちろん不要だ。だが、『食』だけは絶対に欠かすわけにはいかない。
そんな心配を払拭するかのように、ゴン爺は『流れ猫の心得』を教えてくれた。
「いいかミー助、飼い猫だったら決まった時間に決まっただけ餌をもらえるが、俺たちノラ猫にはそんなことは期待できない。だから食べられるものがあったら迷わず食べろ。次はいつ食べられるかなんてわからないからな。腹を下したり、多少具合が悪くなることがあるかもしれないが、その時は諦めろ。餓死するよりましだ」
「こういった道の駅やドライブイン、コンビニなどは人間が何か食べている時がある。そういう時は愛想よく近づいていくんだ。お前は小さくて見た目も可愛いいから、上手くすれば食べ物を貰える」
「人間を信用し過ぎるな。中には猫に悪さをしようとしたり、捕まえようとする輩がいる。人間と接する時には、警戒を怠るんじゃないぞ」
そんなことを俺に教えてくれながら、ゴン爺は野山や川で虫や小動物、魚の取り方を実践してくれた。
「線路があったら線路沿いに歩け。そうすれば必ず駅にたどり着く。駅の近くには繁華街があることが多い。繁華街には残飯があるぞ。ただし、アルコールは絶対に飲むんじゃないぞ」
「海沿いには港がある。港には意外と小魚などが落ちていることがあるから、これもおすすめだ」
「これは裏技みたいなものだが、お寺が意外と狙い目だ。お供え物がある。お供え物というのは、本来持ち帰らなければいけないものだが、そのまま置き去りにしてあることがある。捨ててあるのと同じことだから、罰が当たるなんて思わないで、遠慮なく貰え。ただ、カラスには気をつけろ。あいつらはずる賢いからな」
「ミー助、あん時は悪かったな」
ある時、グレが素直に謝ってきた。ゴン爺にこっ酷く叱られたようだ。こいつは、短気で馬鹿なだけで性根は悪いやつじゃないらしい。
「教えてくれ。どうしたら、あんなに俊敏に動けるようになるんだ?」
俺は、鍛錬を欠かさなかったからな。答えは『とにかく鍛えろ』の一択だが、そんなことを言っては身も蓋もない。その頃には他の猫とも知り合いになっていたので、みんなでできるように『尻尾盗り』を教えてやった。※注《下部参照》




