第38話 ノブとの勝負
ノブと少し離れて向かい合う。
さっきまでは嬉しそうな顔をしていたが、今はいつも以上に真剣だ。
「一発勝負、始め!!!」
ヤスケの掛け声で素早く動く。ノブの動きを察して俺は逆回り。どちらも背後を取ることができず、また向かい合う。あまり近すぎると危険だ。すぐ後ろへ飛び退く。
真っすぐ突っ込んでくるノブを跳ねて躱す。空中で向きを変えないとやられる。着地と同時に今度は俺が突っ込む。
何度も何度も背後を取り合う。
「なんなんだ、お前ら…」
「うゎっ、すげっ」
ヤスケたちの声が聞こえるが、今の俺たちにはただのノイズ。
隙を狙い迷わず動く。狙われる前に躱す。お互いにやろうとしていることはほとんど同じ。激しい動きの連続で息が上がってくるが、それでも神経を研ぎ澄ます。
ノブの動きが止まり、ゆっくり呼吸をしながら俺の出方を伺っている。
よし、今だ!!
俺が動く方向を読んだノブの裏を突く。
驚いた顔をしているノブの尻尾を叩いた俺の勝利。
「ミー助、なんだ今の!? まるっきり逆だったぞ」
「ノブ君、キミはまだまだということだ」
それなりに上位レベルになれば、相手の重心のかけ方や筋肉を見ることで、どう動くかは予測できる。だから、それを逆手に取ってフェイントをかけることが可能だ。だが、俺はさらにその上のレベルの技を使ったんだ。
それは目線。
俺たちは動く前に必ずそっちの方向を見る。俺は逆方向に目線を送ってから動いた。体のフェイントではなく、目線だけのフェイント。
「キングとの戦いで何か吹っ切れた感じがしたんだが、まだまだだったな」
「あんなザコと俺を一緒にすんなよ」
「だよな、俺たちは最強だもんな」
ランマ、ヤスケ、トウキチが駆け寄ってくる。
「あまりにも際どい勝負だったんで、息が止まりそうだったよ」
「お前ら、むちゃくちゃすげぇじゃないか。しびれたぜ」
「これじゃキングさんが敵わないわけだ…」
きっかけは、ノブからの申し入れだった。
「俺たち、魂の兄弟だよな?」
「そうだ。離れていてもずっと兄弟だ」
「にしては、どっちが兄でどっちが弟か決めてなかったぞ」
「いいじゃないか、そんなこと」
「いや、決めよう。勝負で」
「そこまでこだわるか?」
「ミー助の旅の安全を願う時に、兄か弟かでは願い方が違う」
「そんなもんか? まぁいいや。最後の真剣勝負だ」
そんなわけで、尻尾盗りで勝負をすることにしたんだ。
「ヤスケ、これからはノブの鍛錬の相手を頼んだぞ」
「ノブが強いのはわかっていたが、ミー助は更に強いってことか?」
「いや、これは勝負だからな、喧嘩ならノブのほうが強いはずだ」
「早いとこお前たちの仲間になって正解だ」
「ミー助さん、俺も、もっともっと鍛錬するよ」
「ランマの相手はトウキチな。それと新しく仲間になったその他大勢の猫」
ヤスケは粗削りだし、ランマだってまだまだ伸びしろがある。暴力で誰かを従える必要はないが、この町の猫に《《ノブイズム》》が浸透するまでは強さは必要だ。
ノブが隣に来た。
「こうしていると、楽しいな」
「うん、楽しいよ」
「ずっと楽しかったよな」
「うん、楽しかった」
「辛くても、一緒なら…楽しかった」
「だったな…」
(これから寂しくなる…)
お互い、言葉には出さない。離れていても気持ちは通じ合うから。
次回が『放浪編』の最終話となります。
最後までお付き合いよろしくお願いします。




