第37話 告白
うつ伏せになって、ふぅ~と大きな息を吐き出す。隣にはノブが何も言わず俺の言葉を待っている。
「今まで誰にも話したことはないんだけれど…」
猫として生まれた俺には、なぜかわからないが前世の記憶が残っていた。前世…それは、富士山の見える土地で、飼い主に看取られながら寿命を全うした、茶々丸という名前の柴犬。
そんな俺は前世の記憶が蘇った瞬間に、飼い主だった日和に会いに行くことを心に誓った。
それが俺の旅の目的。
ノブは俺の話を遮ることもなく、黙ったまま最後まで聞いてくれた。
「だから、ミー助はいろんなことを知ってたんだな、今さらだけど納得だ」
「俺の話を信じてくれるのか?」
「当たり前じゃないか、お前のことを信じないで誰を信じるよ!」
「ありがとう。これで心置きなく旅を続けることができる」
ずっと隠し事をしてきたようで少し後ろめたかったが、本当のことを伝えたことで胸のつかえがとれた気がした。チラッと横を見ると、嬉しそうで寂しそうな複雑な表情のノブがいる。
もうひとつ、大事なことを伝えよう。
「ノブ、俺の拙い歴史の知識を聞いてくれるかい?」
「あぁ、いいぞ」
「昔、武将がいた」
「武将って言うと、あの二本足の白猫みたいなヤツか?」
(ひこにゃんの写真を思い出しているな)
「強さも人気もトップクラスの武将。名前は『織田 信長』と言う」
「へ~ 俺の名前みたいだな」
「信長は、安土を拠点としていたんだ」
「本当か!? で、そのノブは一番になったのか?」
「いや…泊まっていたお寺で襲われ、建物に火をつけて最期を迎えたらしい」
「まさか…俺は火が怖くてしかたないのは話したよな…」
「信長には『森 蘭丸』、『木下 藤吉郎』、『弥助』などの家臣がいた」
「面白い話だな。偶然にしてはできすぎだ」
犬が猫に生まれ変わったんだから、ノブが織田信長の生まれ変わりと思ってもいいんじゃないか。もちろん、それを証明する手立てはないが。
今夜は気持ちよく眠りにつくことができそうだ。ノブは嬉しそうな顔をしている。立派な兜をかぶった自分の姿でも想像しているのかな。
織田 信長(1534~1582年)
戦国時代に『天下布武』を掲げ、旧体制を打破した革新的な武将です。鉄砲を用いた戦術や楽市楽座などの政策で勢力を拡大し、絢爛豪華な安土城を築きました。冷徹な合理主義者でありながら身内には情が厚いという性格でした。天下統一を目前にしながらも重臣の明智光秀による『本能寺の変』で襲撃され、志半ばで生涯を閉じました。




