第23話 春遠からじ
少年がやってきた。でも、今日は走ってこない。
お洒落なコートを羽織って、隣には同い年くらいの可愛い少女。
二人並んで、俺たちのところまで歩いてきた。
「僕の友だちを紹介するよ」
「え? この猫ちゃんたち?」
「そう。キジ・サバ・チャって名前なんだ」
(チャってなんだよ、加藤さんかよ!)
「この猫たちに餌をあげなきゃって思うと、がんばって家を出て、辛い朝練も続けることができたんだ」
「先輩、毎日朝練してたんですね」
「僕はスポーツ推薦で早く進学が決まったけれど、周りのみんなはまだ受験勉強してたからさ。僕だけ何もしないっていうわけにはいかないだろ」
「がんばってレギュラー取ってくださいね。ずっと応援していますから」
「僕より上手なヤツもたくさんいるんだろうけど、がんばるさ」
「あの…試合に出るのが決まったら、私、観に行ってもいいですか?」
少女の言葉に、少年が少し考えるような間をとった。
「試合に出ないと、来てくれないのかな…」
「え?」
「なにか理由がないと会えないのかな? 君が来てくれないんだったら、僕が会いに戻ってこようかな…」
今度は少女が真っ赤な顔で答える。
「そんなことないです。私、先輩と同じ大学を目指します。だから…」
「ありがとう。それと、もう選手とマネージャーという関係じゃないんだから、僕のことは名前で呼んでほしいな」
「それなら私のことも、下の名前で…オネガイします」
少女が伸ばした手を少年が優しく包み込んだ。
「寒い寒いと思っていたら、今日はアツくてたまんないぜ」
「ペットフードもらってないけど、今日はもうお腹いっぱいだ」
うんっ! アオハルだね~ でも、俺たちにも本物の春がやってきそうだ。
そうそう。
その後、二人からはたくさんのペットフードをもらいました。
少年からは『これでサヨナラだね』って言われたけれど、俺たち3匹は心の奥からお礼を言ったよ。
次の日曜日、少年が京都へ出発するのを少女が見送るらしい。
若い二人に幸あれ!!




