第22話 冬の救世主
寒い、寒い、寒い… 雪が降ってきた。
ペースはゆっくりだが、海沿いを歩いてなんとか敦賀までやってきた。食料はなんとかなる。歩く体力も残っている。けれど、この寒さは我慢できない。俺たちは急いで避難所を探した。
「ミー助、あそこの小屋に行こうぜ!」
ノブが見つけたのは海辺にある小さな船小屋。たぶん、もう使っていないだろう古い小屋に入ってみた。中には埃をかぶった手漕ぎの小舟がある。中に飛び込み、3匹で身を寄せ合ってふぅ~と大きな息を吐き出す。
敦賀から南下しようと考えていたが、このまま進んで山越えは『死の彷徨』になってしまう。
「ノブ、ここをねぐらで冬越えでいいか?」
「そうだな。ランマに無理をさせるわけにもいかないしな」
夜はこの小屋で眠り、明るくなってから体を動かしたり食料を確保したりする日々を過ごしていた。
ある朝
「はっ、はっ、はっ…」
俺たちが小屋を出て遊んでいると、野球帽をかぶった少年がリズミカルに息を吐きながら浜辺を走ってくるのが見えた。朝から熱心なことだ。
「おや? おはよう!」
俺たちに気が付くと、まるで自分の言葉が猫に伝わっているのが当たり前のように、笑顔で声をかけてきた。(実際、伝わっているんだけどね)
なんなんだ、この爽やかな少年は!!
身体は大人ほど大きいが、顔つきはまだ幼く高校生くらいか。
「ニャ~」 (おはよう)
俺も負けないように愛想たっぷりで少年に擦り寄ってみた。少年は少し驚いたが、嬉しそうな顔で俺たちを順番に撫でる。
出会いはこんな感じだったが、その少年は俺たちの『救世主』になった。
翌朝も来たと思ったら、ペットフードを持ってきてくれた。俺たちが美味そうに食べるのを見ながら、いろいろと話しかけてくる。そして、次の日もまた次の日も…
「ミー助、あいついい少年だな」
「ペットフード、美味しいね」
少年が俺たちのところまで走ってきて、話しかけながらペットフードを食べさせてくれる。俺たちが食べ終わるのを待ってから、走っていなくなる。それが日課になった。人間好きな俺はもちろん、ノブもランマもすっかり少年に懐いていた。
「今日は兄さん、来ないね…」
ランマが寂しそうに言う。今日は少年が顔を見せない。
「ランマ、仕方ないだろ。朝飯は俺たちでなんとかしようぜ」
「ノブさん、ペットフードが欲しいんじゃないよ。なんだか顔を見ないとつまんないんだ」
少なくても俺はノブやランマより人間のことを知っている。人間にはいろんな都合があり、毎日続けていたことを休む時がある。でも、それが事前にわかっているのなら、あの少年なら俺たちになにかしら声をかけたはずだ。
あの少年に何かあったのだろうか? 事故か病気か...嫌な予感がする。
しかし、俺のそんな心配はただの杞憂に終わった。




