第14話 バーベキューにて
俺もノブも、山あいの川へ行くのは好きだ。水遊びをするのも楽しいし、汚れた体も綺麗にできる。それに、いろいろな食料が手に入る。
最近、河原でバーベキューをしている人間をよく見かけるようになった。子供たちもたくさんいる。道路を走る車も多くなってきたようだし、たぶん学校が長い休みの日になったんだな。
道の駅やドライブインでも人間から食べる物をもらったが、バーベキューは別格だ。みんな、肉や野菜なんかをたくさん焼いている。そんなところへ俺とノブが近づいて行くと、よほど猫嫌いじゃない人間ならば何かしら食べさせてくれる。
そんな人間たちの中には犬がいることが少なくなかった。さすがに猫を連れてきている人間は見たことなかったけどね。
そんな犬の、俺たちへの態度は大体決まっている。
最初から敵意むき出しで俺たちのことを受け付けない犬。俺たちの姿を見ただけで吠えるから、最初から近づかない。
飼い犬というだけでノラ猫の俺たちを憐れむ犬。これはこれで厄介だ。犬か猫か、飼われているかノラか、そんなの状況の違いだけなのに上下の違いだと勘違いしている。こういう場合はそっと遠ざかる。
俺たちに好意的に接してくれる犬は大好きだ。海で会ったジョンもそんな感じだったよね。
今日も川へ行ったら、バーベキューをしている人間たちの中に茶色い犬がいた。フワフワの長い毛で、身体は俺たちより少し大きいくらい。少し離れた所にいる俺たちに気が付くと、ニヤリと笑って小走りでこっちのほうへやってきた。人間たちが肉を食べ、酒を飲んで騒いでいる傍にいるのに飽きちゃったみたいだ。
「やぁ、キミたちは何してるの?」
「俺たちは旅の途中で川へ遊びに来たんだ」
「旅か…冒険してるんだね。ボクはほとんど家の中にいるから体力もないし、絶対無理だな。少し羨ましいけど…」
「いやいや、飼い主に可愛がってもらって快適に過ごせることは十分幸せだと思うぜ」
お互いの立場を理解して、それでも対等に話せる。こういう関係性はいい。
俺たちが河原の小石の上に寝そべって気持ちよさそうにしているのを見つけて、小さな男の子と女の子がよちよちと近づいて来た。この子たちも大人の空間にいるのが飽きてしまったらしい。
俺たちのほうにそのまま来ると思ったら、川面に流れている葉っぱを見つけ、そっちに寄って行く。
(だめだ、だめだ)
俺は慌てて、その子たちの前に行き、ちょっと威嚇してみる。
(よし、子どもの足が止まった)
「おい、お前、吠えて大人に教えてやれ!」
「クン、クン」
「もっと大きな声で!」
「ヮン、ヮン」
「もっと、腹の底から!!」
「ワンッ! ワンッ! ワンッ!!」
犬の鳴き声に気が付いた大人が慌てて駆け寄ってくる。事なきを得たようだ。
「お前はこの子たちのお兄ちゃんだから、これからも面倒みてやるんだぜ。冒険じゃないけれど、これだって大事なミッションだと思うよ」
「うん、わかった、ありがとう。キミたちもよい旅を!」
「ごめんね、大人だけで騒いでほったらかしにして」
「チャッピー、あなたが教えてくれて良かったわ」
俺とノブは、子どもを抱きしめながら犬を撫でている人間を見て、その場をそっと後にした。




