表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第12話 魂の兄弟

リュウガは弱々しい声でゆっくり話し始めた。


「儂も昔は兄弟猫がいたんじゃ」

「俺たちは兄弟じゃないぜ」

「いや、血は繋がっていなくても兄弟と言うのじゃ。『魂の兄弟』とな」



リュウガは京都からやって来た。京都と言っても、お寺のたくさんある市街ではなく、『天橋立(あまのはしだて)』の近くから。


「儂の兄弟猫の『タイガ』は飼い猫でな、それでもノラ猫の儂と馬が合った」


二匹とも人間の物を()ったり悪さをしたりするのは嫌いで、地猫たちとも仲良くしたいという気持ちが通じ合った。


しかし、晩年となり、死期を悟って流れることを決意したと言う。


「タイガはその時が来れば飼い主に弔ってもらえるだろうが、儂は無様な姿を晒すしかない。だがな、考えようによっては悪いことばかりではない。ノラ猫は住む所を選べるが、逝く所も選べるのじゃ」


()もいずれの年よりか、片雲(へんうん)の風にさそわれて、漂泊(ひょうはく)の思いやまず』


リュウガは寂しそうに呟いた。


別れを告げた時、タイガは何も言わずリュウガのことを止めなかったと言う。あれ、これって俺が旅立つと告げた時のテツと同じじゃないか。思い出したら胸が熱くなってきた。


目の前の老猫(リュウガ)は確かに弱々しい。だが、細めた目には陰りはなく、長い間ノラ猫としての誇りを捨てずに生きてきたのがわかった。



俺とノブで食料を確保して食べさせたが、リュウガは日に日に衰弱していった。



ー ある朝


「今日は雨が降っていないようじゃな」

「そうだね、雨が屋根に当たる音がしない」

「ミー助、ノブ、ちょいと出かけよう」


ここのところ食欲も落ちてしまっていたリュウガは、歯を食いしばるようにして立ち上がりゆっくりと歩き出す。俺たちは無言でリュウガの後に続いた。



人気(ひとけ)のない原っぱまで来て、ふぅと大きな息をしたリュウガが草を指した。


「この草は『猫じゃらし』じゃ。もう少ししたらもっと大きくなって食べられるからな、覚えておけ」

「うん、わかった」


「儂はここから一匹で還る。最後の最後にお前たちに会えて良かったわ」


嬉しそうに笑っているリュウガの姿が涙でぼやけてしまう。俺とノブは、リュウガが草むらの向こうに消えて行くのを黙って見ていた。



「ミー助、天橋立(あまのはしだて)って知ってるかい?」

「あぁ、龍が天に昇る所だ」

「なんだ、それすげぇな」

「リュウガも天まで昇れるといいな」

「猫じゃらしで飢えを凌ぎながら、タイガって猫に会いに行こうぜ」



俺の目的地は静岡だが、方向は同じだ。経由地が決定した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ