第11話 梅雨
俺たちの旅はゆっくりと進んでいた。ノブは海が気に入ったので、海から離れないようにしていたが、できるだけ太い道路を歩くのは避けた。※注
太い道路は車がたくさん走っていて危ない。それに車の音がうるさいし、排気ガスも臭いんだ。
ノブはどこかに行かなければならないという、明確な目的地があるわけでもないし、俺もいつまでに行かなければならないという、タイムリミットがあるわけでもない。そんなに焦る必要はなかった。
疲れた時には気分転換で浜辺へ出てみる。運がいいと、波打ち際に魚が打ち上げられていて食事を確保できた。
「なんだか雨の日が多いな」
ノブがぼやいたが、今までも雨の日はあった。そんな時は人間に見つからないように物陰に隠れて雨をやり過ごした。だが、これだけ雨の日が続くのは、いよいよ梅雨に入ったようだ。これは長期戦になりそうだと思い、俺たちはねぐらを探した。
見つけた建物はスレート葺き屋根の古い倉庫。建物の周りには草が生い茂り、人間の気配がしない。俺たちはところどころ割れている外壁から中に入ってみた。屋根に当たる雨の音が響くが、濡れないだけで十分だ。
「お前たち、何しに来た!!」
優良物件を発見できたことに安心してブルブルと雨を飛ばしている俺たちに、敵意のこもった声がかかった。誰もいないと思った奥のほうから、ガラの悪い三匹の猫が近づいてきた。
「ちょっと雨宿りをさせてもらおうかと思ってね」
「なんだ、余所者か」
「旅の途中なんだが、お前たちは地猫かい?」
「そうだ、ここは俺たちのねぐらだ。出ていけ!」
平和な話し合いのできない種類の猫らしい。そいつらの言い方にイラっとしたのかノブが突っかかる。
「お前らのねぐらって言うが、ここは人間の物だろ」
「ふん! 人間の物は俺たちの物。俺たちの方が強くて賢いからな」
どこから出てくるんだろうね、ねじ曲がったその自信。だが、無駄な争いも面倒なのでここを出て行こうかとも思ったが、ノブはそいつらの言い方が頭にきたらしく睨み合いが続いた。
「すまないが、ちょいとお邪魔させておくれ」
俺たちの緊張を破るように、今にも死にそうな白い老猫がよぼよぼと入ってきた。
「なんだ、今度は死に損ないみたいな爺ぃか」
そう言いながら一匹が老猫に近づいて行き、身体の上に乗った後、いきなり蹴飛ばした。
「とにかくお前ら、今すぐここを出て行け」
俺たちだけだったらまだいいが、老猫にまで非情なことをする相手に俺も腹が立ちノブの前に出た。
「お前の言った言葉の確認だ。強いヤツは弱いヤツから取っていいんだな」
「そうだ」
「そして、この場所はお前たちのものだ」
「そう言っているだろが」
ノブのほうを見ると、俺の言っていることがわかったらしく、ニヤッと嗤った。
俺とノブは一気にそいつらに飛び掛かり、※※※※を※※※して※※※した。いきなり※※された一匹が蹲るが容赦しない。さらに※※して※※ってやった。他の二匹も同じだ。驚いた眼をしている※※※に※※※したら腰を抜かしそうになって※※※しやがった。ノブの攻撃はまだ終わらない。まるで親の仇を討つくらいの勢いで続けざまに※※※したら、みんな※※っちまった。
(R15+) この喧嘩の暴力的な表現は、伏せ字にしてあります
二匹対三匹の数的不利なんて、俺たち最強コンビの前ではハンデにもならない。俺は平和主義者だからここまでやる気はなかったんだが、雨のストレスに加え、老猫への非情な態度を見たノブは相当イライラしていたみたいだ
「もぅ… もぅ勘弁してくれ…」
「もぅ… ぃゃ…だ」
「ゃめて…ゃめてくださぃ…ぉねが…ぃ」
足元がふらつきながら絞り出すような声で謝ってきたが、とどめに巨大ブーメランを返してやった。
「さっきの言葉をそのまま返す。ここは俺たちのものだ、今すぐここを出て行け。梅雨が明けるまでここに来るんじゃない。それと俺は人間が好きだからな、人間から盗ったり馬鹿にする猫は大嫌いだ」
やつらが去った後、老猫のところに行き声をかけた。
「爺さん、大丈夫か。痛いところないか、これでゆっくり休めるからな」
「お前たち兄弟は優しくて強いな…昔の儂を見ているようだ」
『リュウガ』と名乗った老猫は、目を細めて身の上話を始めた。
ミー助は、有料の高速道路や自動車道はわかりますが、国道や県道の何号線ということまでは理解できません。観光案内の看板に描かれている主要な一般道のことを太い道路と表現しています。




