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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
9/11

【SELECT】




夜になった。


同じ駅前広場。


---


人は、明らかに前よりも増えていた。



「……やばいでしょ、これ」


直人が呟く。


---


【同時接続:182,440】


---


スマホの光が、無数に揺れている。


---


「いいね」


黒瀬ミカが、小さく笑う。


---


「ちゃんと“戻ってきてる”」


---


その言葉通りだった。


---


一度、この場に来た人間。


その何割かが、またここにいる。


---


理由は、本人たちも分かっていない。


---


ただ――


---


「来なきゃいけない気がして」


---


そう言う。


---


群衆の中。


---


あの女がいる。


書き換えられた“正しい私”。


---


スマホを握りしめ、前を見ている。


---


「……」


---


表情は穏やか。


---


迷いも、不安もない。


---


ただ、待っている。


---


「ねえ」


---


隣の知らない誰かに話しかける。


---


「これ、すごいよね」


---


相手も、頷く。


---


「分かる。なんか……ちゃんとした自分になれる感じ」


---


“共有されている”。


---


同じ感覚。


---


同じ方向。


---


同じ“完成”。


---


ステージ。


---


永瀬が、その光景を見ている。


---


「……増えてるな」


---


「当然よ」


遥が答える。


---


その声は、もう揺れていない。


---


「前回の影響個体が、再来してる」


---


直人が顔をしかめる。


---


「影響個体って……」


---


「適切な表現でしょ」


遥は淡々と言う。


---


「再現性の確認には最適」


---


永瀬が、わずかに笑う。


---


「いいな、それ」


---


ミカが、マイクを持つ。


---


「それじゃ」


---


ざわめきが、静まる。


---


「もう一回、やるよ」


---


歓声。


---


期待。


---


恐怖は、もうほとんどない。


---


代わりにあるのは――


---


“欲”。


---


【ねえ】


---


ミカの声。


---


【誰にする?】


---


その瞬間。


---


群衆の中の彼女が、目を閉じる。


---


(……選ぶ)


---


もう、迷いはない。


---


(前の私じゃない)


---


(もっと、ちゃんとした私)


---


イントロ。


---


音が流れる。


---


【間違えたままの履歴】


---


彼女の呼吸が、整う。


---


【消せないまま増えていく】


---


“前の違和感”が、少しだけ戻る。


---


(まだ足りない)


---


【選ばなかった未来が

今もどこかで息をしてる】


---


思い出せない記憶。


---


でも、それが“不要”だと分かる。


---


【名前を呼ばれるたびに

違う誰かみたいでさ】


---


周囲の人間も、同じように静かになる。


---


“選ぶ準備”。


---


【ねえ、やり直せるなら

どこから壊せばいい?】


---


彼女の手が、わずかに震える。


---


(全部)


---


(いらない)


---


【正解じゃなくていいから

“今じゃない私”にして】


---


涙が、ひとつ落ちる。


---


でも。


---


悲しみじゃない。


---


解放。


---


【REWRITE 

全部書き換えて】


---


サビ。


---


その瞬間。


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彼女の中で、“何か”が弾ける。


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「……あ」


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視界が、白くなる。


---


【この記憶も感情も

間違いのままでいい】


---


“前の自分”が、剥がれていく。


---


何層も。


---


何枚も。


---


REWRITE REWRITE

今の私いらない


---


「……いらない」


---


口に出る。


---


ねえ、別の誰かで

続きを始めて


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そして。


---


“二度目の書き換え”が、完了する。


---


目を開ける。


---


「……」


---


景色が、違う。


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音が、違う。


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自分が、違う。


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「……これでいい」


---


微笑む。


---


前よりも、ずっと自然に。


---


前よりも、ずっと綺麗に。


---


「……完璧」


---


その言葉。


---


ステージの上。


---


永瀬の耳に、はっきり届く。


---


「……」


---


ゾク、とする。


---


“精度が上がっている”。


---


意図していないのに。


---


いや。


---


“望まれている”。


---


壊れることを。


---


変わることを。


---


「……いいな」


---


小さく、呟く。


---


遥が頷く。


---


「収束してきてる」


---


「無駄が減ってる」


---


ミカが、笑う。


---


「でしょ?」


---


ユラが、静かに言う。


---


「面白くなってきたね」


---


群衆の中。


---


“完成した人間”たちが、同じ顔で笑っている。


---


同じ目で。


---


同じ温度で。


---


同じ“正しさ”で。


---


その光景は。


---


あまりにも、綺麗で。


---


あまりにも、歪だった。


---


――次回、第10話

【FRAGMENT】

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