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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
8/15

【VERSION】




朝。


目が覚めた瞬間、少しだけ違和感があった。


でも、それが何かは分からない。


---


「……あれ」


小さく声が出る。


部屋。


見慣れているはずの天井。


カーテン。


机。


全部、知っている。


なのに。


---


「……こんなだったっけ」


---


スマホが震える。


通知。


---


『今日の会議、10時からだからね』


---


名前。


表示された送信者を見て、少しだけ考える。


---


「……誰だっけ」


---


すぐに答えが浮かぶ。


---


「ああ、上司か」


---


自然に納得する。


---


(……なんで迷ったんだろ)


---


気にしない。


---


起き上がる。


鏡の前に立つ。


---


「……」


---


自分の顔。


---


少しだけ、違う気がする。


---


「……まあいいか」


---


問題ない。


---


“これが私”だ。


---


そう思った瞬間。


違和感は消える。


---


駅前を歩く。


人の流れ。


ざわめき。


---


いつも通り。


---


「……あれ?」


---


足が止まる。


---


この場所。


---


昨日、何かあった気がする。


---


思い出そうとする。


---


「……なんだっけ」


---


出てこない。


---


代わりに、別の感覚が浮かぶ。


---


“ここに来てよかった”


---


理由はない。


でも、そう思う。


---


スマホを開く。


---


動画アプリ。


---


履歴。


---


同じ動画が並んでいる。


---


「REWRITE」


---


再生回数。


何十回も見ている。


---


「……こんなに?」


---


不思議に感じない。


---


「いい曲だし」


---


自然に思う。


---


再生。


---


【ねえ】


---


【誰にする?】


---


その一言で。


胸の奥が、わずかに熱くなる。


---


(……ああ)


---


これだ。


---


これを聴いて、私は――


---


思考が、止まる。


---


必要ない。


---


【間違えたままの履歴

消せないまま増えていく】


---


歩き出す。


---


人の流れに混ざる。


---


全部、しっくりくる。


---


【選ばなかった未来が

今もどこかで息をしてる】


---


(前は、違った気がする)


---


それは“前の話”。


---


今は違う。


---


“今の私”が正しい。


---


【名前を呼ばれるたびに

違う誰かみたいでさ】


---


誰かに肩がぶつかる。


---


「すみません」


---


顔を上げる。


---


見知らぬ人。


---


なぜか、知っている気がする。


---


「……大丈夫です」


---


自然に笑う。


---


“これでいい”。


---


“これが正しい”。


---


“これが完成”。


---


“これが――”


---


【ねえ、やり直せるなら

どこから壊せばいい?】


---


一瞬だけ。


---


違う記憶が、よぎる。


---


駅前。


夜。


音。


---


誰かが、消えて。


---


誰かが――


---


「……?」


---


頭が痛む。


---


次の瞬間。


---


それは、消える。


---


必要ない。


---


【正解じゃなくていいから

“今じゃない私”にして】


---


(違う)


---


(私は、これでいい)


---


【REWRITE 

全部書き換えて】


---


足が止まる。


---


鏡張りのビル。


---


そこに映る自分。


---


「……」


---


少しだけ、見つめる。


---


“知らない顔”。


---


すぐに分かる。


---


「……これが私」


---


笑う。


---


違和感は、もうない。


---


【この記憶も感情も

間違いのままでいい】


---


ポケットの中で、スマホが震える。


---


着信。


---


名前を見る。


---


一瞬だけ。


---


“分からない”。


---


すぐに書き換わる。


---


「……ああ」


---


自然に、納得する。


---


「はい」


---


通話に出る。


---


「うん、大丈夫」


---


声は、いつも通り。


---


「ちゃんとやれるよ」


---


少しだけ、間があって。


---


笑う。


---


「私、もう完成してるから」


---


通話を切る。


---


空を見上げる。


---


何もおかしくない。


---


何も間違っていない。


---


“前の私”なんて、必要ない。


---


「……ねえ」


---


誰に向けたか分からないまま、呟く。


---


「これでよかったよね」


---


答えは返ってこない。


---


大丈夫。


---


問題ない。


---


“もう決まっているから”。


---


遠くで。


---


誰かが、同じ曲を再生する。


---


ねえ


誰にする?


---


その声が。


---


少しだけ、重なって聞こえた気がした。


---


多分。


---


気のせいだ。


---


――次回、第9話

【SELECT】

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