【REWRITE】
あの曲の"続き"が聴きたい…。
昨日の配信は、どこにも残っていなかった。
アーカイブは正常。
ログも正常。
再生履歴にも、異常はない。
——なのに。
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夜の駅前広場。
ざわめきは、昨日より明らかに大きい。
人が集まっている。
意図的に。
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「……増えてる」
遥が、低く呟く。
視線は群衆。
スマホを構えた人間の数が、異様だった。
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【同時接続:72,118】
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「当然でしょ」
黒瀬ミカが軽く言う。
マイクを指で弾きながら。
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「昨日、あれだけやったんだから」
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遥は何も返さない。
ただ、永瀬を見る。
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「……本当にやるのね」
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「ああ」
短い返答。
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「曲、変える」
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「……」
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「“REWRITE”」
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その一言で。
遥の表情がわずかに揺れる。
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「……何、それ」
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「新曲だ」
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説明は、それだけだった。
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ユラが、少し離れた場所で笑う。
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「いいね」
小さく。
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「ちゃんと進んでる」
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直人が、顔をしかめる。
「……嫌な予感しかしねえ」
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永瀬は、何も言わない。
ギターを構える。
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「……配信、来てる」
直人が画面を見せる。
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【同時接続:103,441】
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コメントが流れる。
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『またやるの?』
『昨日のやつ?』
『なんか違う曲っぽい』
『怖いけど見る』
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「……始める」
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誰も止めない。
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最初に、声だけが落ちる。
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「ねえ」
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ミカの“声だけ”。
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「誰にする?」
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その一言で。
空気が、止まる。
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まだ音は鳴っていない。
なのに。
全員の意識が、揃う。
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遥の心臓が、わずかに跳ねる。
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(……何…これ)
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イントロ。
音が、流れ始める。
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【間違えたままの履歴】
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ミカの声が、滑り込む。
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【消せないまま増えていく】
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人の表情が、ゆっくり変わる。
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【選ばなかった未来が
今もどこかで息をしてる】
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遥は、周囲を見る。
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違う。
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昨日と違う。
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“消える気配”じゃない。
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“変わる気配”。
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【名前を呼ばれるたびに
違う誰かみたいでさ】
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一人の男が、足を止める。
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「……あれ?」
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自分の手を見る。
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「俺……」
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言葉が、続かない。
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【“これが私”って答えは
最初からどこにもない】
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遥の背筋が冷える。
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(これ……)
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“消す”んじゃない。
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(変えてる)
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【ねえ、やり直せるなら
どこから壊せばいい?】
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ミカの視線が、ゆっくりと観客をなぞる。
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【正解じゃなくていいから
“今じゃない私”にして】
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“選ばせている”。
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遥は理解する。
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(これ、止めないと――)
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【REWRITE
全部書き換えて】
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サビ。
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その瞬間。
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一人の女性が、ふらりと揺れる。
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「……え?」
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スマホを落とす。
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「……なんで」
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顔を上げる。
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「……こんなとこに、いるの?」
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声が変わっている。
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「私、今日……仕事、あるのに」
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その表情は、
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まるで“別人”。
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【この記憶も感情も
間違いのままでいい】
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遥の呼吸が速くなる。
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(ダメだ)
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(これ以上は――)
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【REWRITE
今の私いらない】
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ミカの声が、強くなる。
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【ねえ、別の誰かで
続きを始めて】
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周囲で、同じ現象が起きる。
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「……あれ?」
「俺、なんでここに……」
「違う、違う……こんなはずじゃ」
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混乱。
でも。
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誰も“異常”とは認識しない。
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“そういうもの”として処理されていく。
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遥の視界が、揺れる。
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(止める)
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(今止めないと)
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一歩、踏み出す。
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その時。
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ミカの声が、落ちる。
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「ねえ」
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一瞬の静寂。
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全員の意識が、そこに集中する。
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「誰にする?」
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遥の足が、止まる。
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思考が、引きずられる。
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(誰に……)
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違う。
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(私は――)
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止める側だ。
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そう思った、はずなのに。
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頭の奥で、別の声がする。
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“このままじゃ、無駄に消える”
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(……え?)
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“最適化すればいい”
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(違う)
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“管理すれば、被害は減る”
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心臓が、強く鳴る。
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“これは現象だ”
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“だったら、制御できる”
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(……それは)
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“止めるより、有益”
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視界が、クリアになる。
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音が、ぴたりと合う。
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遥の中で、何かが“決まる”。
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【REWRITE
全部書き換えて】
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サビが、もう一度来る。
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その瞬間。
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遥は、理解する。
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“選べる”。
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そして――
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選んだ。
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(……止めるより)
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(使う)
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何かが、静かに書き換わる。
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音もなく。
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違和感もなく。
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ただ、自然に。
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曲が終わる。
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ざわめき。
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誰も、異常に気づかない。
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ただ、少しだけ“違う人間”が増えただけ。
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「……」
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永瀬が、遥を見る。
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「……どう思う」
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問い。
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遥は、少しだけ考える。
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そして。
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「再現性はある」
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その一言。
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永瀬の目が、わずかに見開かれる。
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「条件を整理すれば、もっと安定させられる」
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声は、いつも通り冷静。
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でも。
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決定的に、違う。
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「今のままだと、無駄が多い」
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ミカが、笑う。
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「いいね」
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遥は続ける。
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「消すより、こっちの方が効率いい」
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一拍。
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「“使える”」
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沈黙。
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その言葉で。
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完全に、何かが終わった。
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ユラが、小さく拍手する。
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「成功」
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静かに。
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「綺麗に書き換わったね」
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遥は、何も感じていない顔で言う。
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「次は、もう少し精度を上げましょう」
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永瀬は、数秒だけ黙る。
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そして。
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小さく、笑った。
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「……いいな、それ」
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【同時接続:148,992】
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コメントが流れる。
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『なんか今回やばくない?』
『怖いけど好き』
『前よりキツい』
『でも完成度上がってる』
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その全てを、背に受けながら。
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バンドは、次の段階へ進む。
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もう、止める理由はどこにもない。
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その時。
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遥が、ふと呟く。
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「……ねえ」
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誰に向けた言葉でもない。
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「“誰にする?”って、誰が言ったの?」
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沈黙。
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ミカは、何も言わない。
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永瀬も、答えない。
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誰も。
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その問いに、違和感を持っていない。
――次回、第8話
【VERSION】




