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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
5/15

【DESYNC】




「……もう一回やる」


永瀬は、スマホの画面を見たまま言った。


静かな声だった。


だが、その意思はもう完全に揺るがない。


---


「……は?」


遥の声が、低くなる。


「何言ってるか分かってる?」


「分かってるさ」


即答だった。


「確かめる必要がある」


---


コンビニの床。


落ちたままのスマホ。


再生は止まっている。


だが、画面にはまだ残っている。


【再生数:1,204,883】


---


「彼女が消えたのは、サビの入り」


永瀬は続ける。


「Aメロじゃない。Bメロでもない」


淡々と。


「“ピーク”だ」


---


遥が一歩詰め寄る。


「それを確認するために、もう一回やるって言ってるの?」


「……ああ」


---


沈黙。


---


「ふざけないで」


低い声。


今までで一番冷たい。


「人が消えてるのよ?」


---


「……」


---


「実験とか、そういう話じゃないでしょ」


---


「実験だよ」


被せるように言う。


---


遥の動きが止まる。


---


「構造があるなら、再現できる」


永瀬の目は、もう迷っていなかった。


「再現できるなら、制御できる」


---


「制御?」


遥の声が震える。


「人を消しておいて?」


---


「……」


一瞬だけ、間が空く。


---


「だから、分かる必要がある」


---


その言葉で完全に、線が引かれた。


---


「……最低」


遥が呟く。


---


「知ってる」


---


視線を逸らさない。


---


「俺たちにしかできない事だ」


---


背後で、笑い声。


---


「いいね」


黒瀬ミカだった。


壁にもたれて、楽しそうに見ている。


---


「ちゃんと分かってきたじゃん」


---


「……ミカ」


遥が睨む。


「止めなさい」


---


「なんで?」


軽い声。


---


「だって、面白いじゃん」


---


「……!」


---


ミカは、スマホを拾い上げる。


画面を見て、少しだけ首を傾げる。


---


「ねえ」


永瀬に向ける。


「どこでやる?」


---


「……場所は変える」


即答だった。


---


遥が顔を上げる。


---


「同じ場所だと、ノイズが入る」


---


「ノイズ……?」


---


「さっきの残響が残ってる可能性がある」


淡々と分析する。


---


「だから、別の場所で」


---


「……本気で言ってるの」


---


「本気だよ」


---


その時。


小さな声。


---


「いい場所、あるよ」


---


ユラだった。


いつの間にか、すぐ近くにいる。


---


「人、多いとこ」


---


遥が振り向く。


「あなた……」


---


ユラは気にしない。


ただ、永瀬を見る。


---


「観測するなら、その方がいいでしょ?」


---


「データ、いっぱい取れるし」


---


その言葉に。


永瀬の指が、わずかに動く。


---


「……どこだ」


---


遥が息を呑む。


---


「ダメ」


即座に言う。


「それ以上やったら、本当に――」


---


「駅前広場」


ユラが被せる。


---


「人、たくさんいる」


---


「……!」


---


「配信も映えるし」


ミカが笑う。


---


「ちょっと待って!」


遥が叫ぶ。


---


「それ、もうテロでしょ!」


---


「違うよ」


永瀬が言う。


---


静かに。


---


「これは音楽だ」


---


沈黙。


---


その言葉が、一番危険だった。


---


【再生数:1,387,550】


---


スマホの通知が鳴り続ける。


---


『ライブやらないの?』

『次いつ?』

『生で聴きたい』

『配信して』


---


求められている。


もっと。


---


「……やるなら」


直人が口を開く。


---


全員の視線が向く。


---


「俺も行く」


---


「直人!?」


遥が叫ぶ。


---


「止めてよ!」


---


「止まんねえだろ、もう」


苦い顔で言う。


---


「だったら、せめて見てる」


---


「……」


---


永瀬は、ゆっくり頷く。


---


「決まりだ」


---


遥が、その場に立ち尽くす。


---


「……本気で、やるのね」


---


誰も否定しない。


---


数秒の沈黙。


---


そして。


---


「……分かった」


遥が言う。


---


顔を上げる。


その目は、もう揺れていない。


---


「じゃあ、私も行く」


---


「……は?」


---


「止めるために」


---


一歩前に出る。


---


「最後まで」


---


その言葉に。


ミカが笑う。


---


「いいね」


---


ユラも、わずかに目を細める。


---


「じゃあ」


小さく呟く。


---


「次は、どれくらい消えるかな」


---


動き始めた運命は、誰にも止められない。


---


物語は、次の段階へ進む。


---


――次回、第6話

【NOISE】

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