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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
13/15

【DEFINE】




静かだった。


---


フェスの翌日。


熱狂の余韻がニュースになるはずなのに。


どこか、違う。


---


「……落ち着きすぎてる」


直人がスマホを見ながら言う。


---


画面には


『大規模音楽イベント、大成功』


『観客満足度、過去最高』


『新時代の体験型ライブ』


---


「……なんだこれ」


違和感。


---


だが。


---


“誰も違和感を持っていない”。


---


遥が、淡々と分析する。


---


「正常化されてる」


「KERNELの影響が残ってる」


「認識そのものが書き換えられてる」


---


直人が顔をしかめる。


---


「……やりすぎだろ」


---


沈黙。


---


その時。


---


「……そうか?」


二人が振り向く。


---


永瀬。


---


椅子に座り、ギターを触っている。


---


「……何が?」


直人が聞く。


---


永瀬は、少しだけ考える。


---


「……別に、間違ってない」


---


空気が変わる。


---


遥が、ゆっくりと見る。


---


「……本気で言ってる?」


---


「ああ」


「全員、納得してる」


「なら、それが正しい」


---


直人が、強く言う。


---


「違うだろ」


---


「“そう思わされてる”だけだ」


---


沈黙。


---


永瀬が、視線を上げる。


---


「……それの、何が違う」


---


「は?」


---


「思うのも、思わされるのも」


「結果が同じなら、区別する意味あるか?」


---


それは明らかに、以前の永瀬ではない。


---


遥が、静かに言う。


「……影響、出てる」


「KERNELは、演奏者にも干渉する」


---


永瀬は、笑う。


---


「知ってる」


---


その答えを理解している。


---


でも。


---


止める気がない。


---


「……問題ない」


「俺は、“俺である”」


---


その言葉の直後。


わずかに、手が止まる。


---


「……」


---


違和感。


---


一瞬だけ。


---


(……俺?)


---


何かが、引っかかる。


---


(“俺”って、何だ?)


---


思考が、ズレる。


---


だが。


---


すぐに、整う。


---


(……決まってる)


---


(俺は、俺だ)


---


“定義する”。


---


自分で。


---


その瞬間、違和感が消える。


---


遥が、それを見逃さない。


---


「……今」


「何があった?」


---


永瀬は、答えない。


---


ただ。


---


ギターを強く握る。


---


「……別に」


「何もない」


---


嘘だ。


---


本人は、“そう認識している”。


---


「……ねえ」


ミカが、静かに口を開く。


---


「それ、気持ちいいでしょ?」


---


全員が、彼女を見る。


---


ミカは、笑っている。


---


優しく。


---


でも。


---


逃げ場を与えない顔で。


---


「自分で、自分を決められる感じ」


「何でも正しくなる感じ」


「全部、許される感じ」


---


一歩、近づく。


---


「……やめられる?」


---


沈黙。


---


永瀬は、答えない。


---


答えられない。


---


なぜなら。


---


“やめる理由”が、存在しない。


---


「……なあ」


直人が言う。


---


「これ、このまま続けたらどうなる?」


---


誰も、すぐには答えない。


---


だが。


---


遥が、口を開く。


---


「……最終的に」


---


少しだけ、間を置いて。


---


「“個人”が消える」


---


「は?」


---


「全員が、自分を定義できる状態になる」


「でも、その定義は共有される」


「矛盾が消えるから」


「……結果」


「“同じもの”になる」


---


静寂。


---


それは。


---


“終わり”の形だった。


---


「……それでもいいか?」


---


誰に向けたか分からない問い。


---


だが。


---


永瀬が、答える。


---


「……いいんじゃないか」


---


即答だった。


---


「矛盾して苦しむくらいなら」


「最初から揃ってた方が楽だろ」


---


その言葉。


---


完全に。


---


“人間の側”から外れている。


---


「……」


---


遥が、小さく息を吐く。


---


「……そう」


---


理解する。


---


もう。


---


戻らない。


---


「……ねえ」


---


ミカが、最後に言う。


---


「次、どうする?」


---


永瀬は、少し考える。


---


そして。


---


静かに、言う。


---


「……もっと上をやる」


---


「は?」


直人が固まる。


---


「KERNELでは、まだ不完全だ」


---


その言葉。


---


場の空気が、凍る。


---


「……完全にする」


---


その瞬間。


---


“終わり”が、確定した。


---


――次回、第14話

【VOICE】

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