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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
12/15

【KERNEL】




永瀬率いる404 NOT FOUNDは

野外フェス会場で演奏する事になった。


始めは永瀬を止めようとしていた遥も、

今は彼等の賛同者。


書き換えられた彼女は

今まで以上に敏腕マネージャーだった。


---


広すぎる空間。


---


ステージの光が、空を切り裂いている。


---


数万人。


---


人、人、人。


---


「……俺たち、無名のバンドだったんだぜ」


直人が呟く。


---


【同時接続:1,204,882】


---


「もう“バンド”じゃないわね」


「現象として拡大してる」


遥が言う。


---


その声は、冷静すぎた。


---


永瀬は、ステージの上から見下ろす。


---


圧倒的な数。


---


「……静かだな」


---


異様だった。


---


誰も騒いでいない。


---


待っている。


---


“何かを受け取る準備”をしている。


---


ユラが、小さく笑う。


---


「来てるよ」


---


視線の先。


---


前方エリア。


---


“それ”がいる。


---


いや。


---


一体じゃない。


---


複数。


---


“揺れている存在”。


---


完全でも、不完全でもない。


---


「……進化してる」


遥が呟く。


---


「REWRITEに適応してる個体がいる」


---


ミカがステージに立つ。


---


「ねえ」


---


その一言で。


---


数万人の意識が、揃う。


---


「始めるよ」


---


歓声は、ない。


---


代わりに。


---


“期待”だけが、膨らむ。


---


「さあ」


---


ミカの声が、落ちる。


---


「貴方を、認めてあげる」


---


その瞬間。


---


会場全体が、“止まる”。


---


風の音すら、消える。


---


低音。


---


新曲【KERNEL】が、始まる。


---


【私の中に居座る"ワタシ"

この存在の条件を

今ここで決めていい?】


---


音が、波のように広がる。


前方の“それ”が、震える。


---


「……また、来た」


---


前回とは違う。


---


逃げない。


---


「……今回は」


---


顔を上げる。


---


「……選ばない」


---


【KERNEL】


---


その一言で。


---


“選択の意味”が消える。


---


【基準を書き換えて

ねえ、“私である理由”

それすらが選択肢】


---


数万人が、同時に呼吸を止める。


---


思考が、揃う。


---


「……っ」


---


失敗体が、歪む。


---


「違う」


---


「違う、違う」


---


“否定する理由”が、見つからない。


---


【境界なんて曖昧でいい

輪郭はあとからついてくる】


---


周囲の人間が、静かに笑う。


---


同じ顔で。


---


同じ温度で。


---


「……これでいい」


---


“それ”の声が、揺れる。


---


「……これで」


---


崩壊が、止まる。


---


完全ではない。


---


“成立する”。


---


【壊すことも、創ることも

同じ位置にあるから】


---


ステージ。


---


永瀬の視界が、わずかに歪む。


---


(……重い)


---


この曲。


“自分にも来てる”。


---


「……っ」


---


一瞬、指が止まりそうになる。


---


ミカが、ちらりと見る。


---


笑う。


---


(逃げるな)


---


その目が言っている。


---


【貴方を、認めてあげる】


---


その瞬間。


“それ”が、完全に止まる。


---


そして。


---


「……私は」


「……これでいい」


矛盾した存在が、固定される。


---


同時に。


---


会場全体が、同じ結論に至る。


---


「……これでいい」


「……これでいい」


「……これでいい」


波のように広がる。


---


【私の中に居座る"ワタシ"

この名前も存在も

意味を与え直しましょう

KERNEL】



---


世界が、揃う。


---


終わり。


---


音が、消える。


---


静寂。


---


数万人。


---


誰も、動かない。


---


ただ。


---


“納得している”。


---


「……成功だ」


永瀬が呟く。


---


遥が頷く。


---


「完全に支配下」


---


ミカが、観客を見渡す。


---


「ねえ」


---


小さく。


---


「気持ちいいでしょ?」


---


誰も答えない。


---


ただ全員が、同じ顔で笑っていた。


---


空。


---


音が消えたはずなのに。


---


まだ、何かが響いている。


---


見えない波が、街の外へと広がる。


---


もっと遠くへ。


---


もっと広く。


---


静かに。


---


確実に。


---


「……もう止まらないね」


---


ユラが、楽しそうに言う。


---


その言葉通り。


---


これはもう、“ライブ”ではない。


---


“書き換え”でもない。


---


“定義”そのものだった。


---


――次回、第13話

【DEFINE】

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