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"ERROR"  作者: 色斑にじみ
11/14

【INTENTION】




最初に“それ”が動いたのは、誰も見ていない瞬間だった。


---


駅前広場。


人はほとんどいない。


ライブの余熱も、もう消えている。


---


街灯の下。


---


“それ”は、まだそこにあった。


---


人の形。


---


でも。


---


中身が、ない。


---


「……」


---


動かない。


---


呼吸もない。


---


ただ、そこに“ある”。


---


数秒。


---


数分。


---


そして――


---


「……あ」


---


声。


---


小さい。


---


壊れかけの音。


---


「……わた、し」


---


首が、ぎこちなく動く。


---


「……」


---


目が、ゆっくりと開く。


---


焦点は、合っていない。


---


“何か”を見ている。


---


「……いる」


---


言葉が、つながる。


---


「……ここ、に」


---


その瞬間。


---


頭の中で、“音”が再生される。


---


【ねえ

誰にする?】


---


ビク、と体が揺れる。


---


「……ちがう」


---


即座に、否定する。


---


「……それ、じゃない」


---


だが。


---


消えない。


---


【間違えたままの履歴】


---


「やめて」


---


【消せないまま増えていく】


---


「やめてやめてやめて」


---


声が、重なる。


---


複数の“私”。


---


選ばなかった未来が

今もどこかで息をしてる


---


「……いる」


---


気づく。


---


「……中に、いる」


---


頭を押さえる。


---


「全部、いる」


---


“消えなかったもの”。


---


“上書きされなかったもの”。


---


“捨てられなかったもの”。


---


全部が、残っている。


---


混ざったまま。


---


「……これ」


---


ゆっくり、立ち上がる。


---


「……これが、私?」


---


違う。


---


分かっている。


---


これは“完成”じゃない。


---


「……消えてない」


---


その事実だけが、残る。


---


「……あいつら」


---


顔を上げる。


---


ステージのあった方向。


---


「……消した」


---


「……選ばせた」


---


「……間違えたら、捨てた」


---


断片的な理解。


---


だが。


---


十分だった。


---


「……なら」


---


口元が、わずかに歪む。


---


「……いらない方が、消えればいい」


---


その発想…それは、


---


彼らと“同じ”。


---


しかし、


---


決定的に違う。


---


「……私が、選ぶ」


---


静かに呟く。


---


「……私が、決める」


---


その瞬間。


---


周囲の“音”が、歪む。


---


街のノイズ。


車の音。


遠くの話し声。


---


それらが、混ざる。


---


崩れる。


---


「……聞こえる」


---


目を閉じる。


---


「……全部、ズレてる」


---


そして。


---


一歩、踏み出す。


---


「……直せる」


---


その言葉と同時に。


---


通りすがりの男が、足を止める。


---


「……え?」


---


“それ”を見る。


---


視線が合う。


---


その瞬間、男の表情が、固まる。


---


「……なんで」


---


声が揺れる。


---


「……なんで、俺」


---


記憶が、ズレる。


---


「……違う」


---


「……これ、違う」


---


“それ”が、近づく。


---


ゆっくりと。


---


「……選んで」


---


小さく、囁く。


---


「……いらない方」


---


男の瞳が、揺れる。


---


「……やめろ」


---


「……やめろ、やめろ」


---


でも。


---


逃げられない。


---


「……そう」


---


“それ”が、微笑む。


---


歪んだ、笑顔。


---


「……それでいい」


---


次の瞬間。


---


男の表情が、変わる。


---


静かに。


---


完全に。


---


「……あ」


---


理解する。


---


「……いらなかったのか」


---


何かを、手放す。


---


何かを、切り捨てる。


---


そして。


---


「……これでいい」


---


笑う。


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“正しい顔”で。


---


“それ”が、それを見る。


---


数秒。


---


そして。


---


「……できた」


---


「……簡単」


---


その声は少しだけ、嬉しそうだった。


---


遠く、ビルの屋上。


---


ユラが、それを見ている。


---


「……あーあ」


---


小さく笑う。


---


「やっちゃった」


---


スマホを取り出す。


---


ライブ配信のアーカイブ。


---


「REWRITE」


---


「……これ、広がるよ」


---


楽しそうに言う。


---


「バンドだけじゃなくなる」


---


静かに。


---


世界のルールが、変わり始める。


---


ーー次回、第12話

【KERNEL】

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