2話_ハズレギフトの正しい使い方!
「おぎゃあ! おぎゃあ!」
自分の口から発せられた甲高い泣き声で、俺は意識を覚醒させた。
自分を抱きかかえる大きな温もりと、男女の安堵したような声が聞こえてくる。
「……%$#&、エイル!」
「#$%、……」
完全に未知の言語だが、彼らが今世の両親なのだと理解できた。
俺はひどくぼやける目を凝らし、周囲の情報を集めてみた。
赤ん坊の視力では、近くにあるランプの薄明かりと、茶色い天井らしきものがわずかに見えるだけだ。
だが、俺を抱きかかえる男女の服から伝わるゴワゴワとした粗末な布の感触や、漂ってくる土と木の匂いから、現代ではないことがはっきりと分かる。
どうやら、本当に『剣と魔法の世界』の、しかもどこかの辺境の村に転生してしまったらしい。
それから数日が経ち、俺は赤ん坊ながら一生懸命ギフトの『濾過』を使っていた。
きっかけは、毎日の沐浴だった。
母が用意してくれた桶の水は、一見すると透き通って見える。
村人たちが洗濯などをする場所は避け、なるべく上流の綺麗な水を汲んでくれているのだろう。
だが、微かに泥と青臭い匂いがするのだ。
蛇口をひねれば安全で綺麗な水が出るのが当たり前だった、現代日本の感覚からすると、どうしても抵抗があった。
見えない雑菌や寄生虫がうようよしているかもしれないと考え始めたが最後、気になって仕方がない。
俺は切実な自衛として、桶のお湯に浸かっている最中にこっそり『濾過』を発動し、浄化を毎日繰り返していた。
そして二週間が経ったころ、俺は困窮を極めていた。
そう、赤ん坊ならではの不快感。
自身の排泄物により、布おむつで蒸れた肌はかゆくてたまらない。
厄介なおむつかぶれを防ぐため、試しに自分のおむつの中のおしっこに『濾過』を使い、ただの無臭の水に浄化してみる。
後でおむつを替えに来た母親は、『あら? おしっこじゃなくて、ただのお水みたいね……?』といった感じで不思議そうに首を傾げていたが、俺の下半身の快適さは飛躍的に向上した。
そして三週間目、俺は限界だった。
そう、大きいほうである。
赤ちゃん特有のゆるゆるは、何といっても不快極まりない。
ただ、ふと俺は考えた。
こんなに水っぽければ、『濾過』を使ったらどうなるだろう。
トライ&エラーの精神で、発動してみた。
……見事に汚物が取り除かれ、残ったのはただの綺麗な水だけだった。
うむ、このギフトは素晴らしいものだ。
URの【聖剣の勇者】やSSRの【真理の賢者】では、こんな清潔なベビーにはなっていないことだろう!これはまさに異世界転生ベビー最強のギフト。
俺はとんでもないものを手に入れてしまったのかもしれない。
そうやって、自分を励ますことくらいしかできなかった……完。
……だが、待てよ?考えろ、考え続けろマクガイバー。
『濾過』なのだから、水分から固形物が分離されるのは当然だ。
分離された汚物はどこへ消えたのか。そして、このギフトは、一体どこまで通用するんだ?
さらに数日後、俺はその疑問を検証する機会に遭遇した。
窓の隙間から入り込んだ小さな羽虫に、腕を刺されてしまったのだ。
赤ん坊の柔らかな肌は赤く腫れ上がり、かゆみと熱を帯びていく。
涙をいっぱいにためながら、俺はふと考えた。
体の中に入り込んだ虫の毒だけを、不純物として取り除くことはできないか?
腫れた箇所に意識を集中し、『濾過』を発動してみる。
すると、赤みとかゆみが嘘のようにスッと引いたのだ。
だが同時に、俺の胸の奥にチクッと少しだけ嫌な痛みが走った。
水や排泄物の時にはなかった、明確な『代償』の感覚だ。
この現象を見て、俺は一つの仮説を導いた。
この能力は、単なる浄水器ではない。自分もしくは触れている範囲の『害』になる部分を、ピンポイントで分離できるものなんだ。
そして、水や排泄物の場合は、体の負担はゼロに等しく、虫の毒を濾過した場合は、『濾過』の反動のようなものが、ダメージとして跳ね返ってきた。
どこまでも不便で、リスキーな能力だ。
この異世界には、きっと、凶悪な魔物や頭のおかしいギフトを持った狂人も必ず存在する。
こんなギフトでは、村の外に出た瞬間に殺されてしまう。
生き残るためには、この『濾過』を極限まで使いこなすことが唯一の生命線だった。
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