1話_リセマラってできますか?
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偶然、絶望の淵から救った彼女たちが、Nレアギフトしか持たない俺を、いくら甘やかしてくれようと、異世界そのものは俺にちっとも甘くない。
そもそも、俺の人生の終わり方からして間違っていた。
深夜の帰り道。突如として頭上に降ってきた『巨大な黒いヘドロ』。
べちゃり、というけたたましい音とともに、俺の全身はその謎の汚物に押し潰された。
……いくらなんでも、理不尽な死に方すぎないだろうか。
◇
気がつくと、俺は真っ白な空間で、とてつもなく美しい女性と対面していた。
光の衣を纏った、息を呑むほどの絶世の美女。
彼女はふわりと上品に膝をつき、潤んだ瞳で上目遣いに俺を見つめながら、そっと胸の前で手を合わせていた。
「……えっと、どちら様ですか?」
『……驚かせてしまってごめんなさい。私は、神と呼ばれる存在よ。……といっても、呆れてしまうわよね』
鈴の音のような、心地よい声だった。
『私の世界の者が廃棄したものが、次元のひずみを抜けて、あなたの頭上に落ちてしまったの……。本当にごめんなさい』
「え、異世界の不法投棄で死んだんですか!?」
『ええ……。本当にごめんなさい』
「でも、元の世界に戻れるんですよね?」
『それが……ごめんなさい。あの黒いヘドロであなたの身体は完全にペシャンコになってしまったから、魂だけ戻してもすぐにまた死んでしまうのよ』
「悲惨すぎないですか!?」
『……だから、お詫びと言ってはなんだけれど、私の世界――あなたがたの世界でよく物語に描かれているような、いわゆる「剣と魔法の異世界」へ新しい身体で転生させてあげるわ。さあ、これを受け取って?』
女神がふわりと立ち上がり、優しく微笑むと、空中に数百枚の光り輝くカードが展開された。
『この中から一枚、あなたの魂に刻むギフトを選んでみて? URの【聖剣の勇者】や、SSRの【真理の賢者】など、素敵な力がたくさんあるわよ』
現世のいわゆる異世界系の剣と魔法の世界というなら、まさに異世界王道のチート能力がもらえるということだ。
だが、待て。
「どのカードがどのギフトなのか、全く書いていない気がするんですが……」
『ふふっ、それは秘密よ。あなたの直感で、運命を切り開いてみて?』
俺は昔から「ここぞという場面で、致命的についていない」という自覚があった。
テストの山勘は必ず外れ、懸賞の類いもかすりもしない。
常に正規分布の左端を這いずるような不運と共に生きてきたのだ。
いつもの嫌な予感が頭をよぎる。
それを振り払うように、俺は一番右端で光っていた裏返しのカードに手を伸ばした。
これだ。根拠はないが、俺の直感が「これしかない」と叫んでいる。
ここでURを引いて、今までの不運をすべて精算してやる……!
指先が触れた瞬間、まばゆい光が溢れ――
パカリ、と。
軽い音を立てて、カードが表に返る。
そこには、虹色でも金色でもなく、泥水のように鈍いねずみ色でぽつんと書かれていた。
「N:濾過」
……濾過?
いや待て、【聖剣の勇者】とかは職業っぽい名前なのに、なんで俺のだけ単なる『物理現象』なんだよ!
俺が心の中で激しいツッコミを入れていると、女神は困ったように眉を下げた。
『あら……。よりによって、数億分の一の確率のノーマルを引いてしまうなんて。……ふふっ、あなた、なんだか不思議な運勢を持っているのね』
女神はそう言ってクスっと笑うと、事も無げに右手をかざした。
『それじゃあ、さっそく準備を始めるわね? 魂をあちらの世界に定着させて――』
「ちょ、ちょっと待ってください! 終わらせようとしないで! 俺は廃棄物に巻き込まれて死んだんですよ!? なんでせっかくの来世が浄水器みたいなギフトなんですか!」
俺は即座にプライドをかなぐり捨てた。
女神の前へ床に勢いよく膝をつくと、すっと立つ女神の足にしがみつき、懇願した。
「女神様、一生のお願いです! どうかもう一回だけ引かせてください!」
『ひゃうっ!? も、もう……仕方ないわね。今回だけよ? ほら、もう一回引いてみて』
今度こそまともなギフトを引いて、平穏で安泰な人生を確定させてやる……!
女神の甘やかすような優しい声に背中を押され、気合とともに引いた二枚目のカード。
そこには、先ほどと全く同じ鈍いねずみ色で「N:濾過」と書かれていた。
『……ふふっ、ある意味、奇跡ね』
「嘘だろ……」
俺は倒れた。
目の前が真っ暗になった。
……おかしい。
ステータスカンストとかチート能力がもらえるイベントなんじゃないのか……。
「ま、待って! もう一回! あと一回だけ引かせてください!」
『ごめんなさい。さっきの二回目だって、あなただけの特別だったのよ? だから、もうダメなの』
「そんな……っ!」
『……でも、同じカードが二枚重なったことで、進化が起きたみたいね』
女神は優しく微笑むと、そっと俺の頬に柔らかい手を添えた。
『大丈夫、あなたならきっと素敵な人生にできるわ。……いってらっしゃい』
甘い香りと温もりを残し、女神がふわりと微笑んだ瞬間。
目の前が真っ暗になっている俺の意識は、真っ白に染まった。




