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047(ローンウルフ達也の歓喜)

俺は飯を食った後に自分の部屋に入る。薄暗い中、ガリガリガリガリ。ハビィがベッドの柱で爪研ぎをしていた。俺は天井の電気を点ける。


「コラッ」

『ひっ! キャット・ソーリー』

「爪研ぎがほしけりゃ買うから。バリバリじゃん」

『その色紙は何?』


話を逸らしたな? まあいいけど。


「これはな、タイガーテールっていう昭和のロックバンドのサイン色紙だ、良いだろ」

『僕はマイケルしか聴かないから興味ないや』

「贅沢な三毛猫だ」

『しかも、レアなオスの三毛猫、良いでしょ』

「それ、マウント取ってるつもり?」

『ノーダメージだと~』

「それよりさ聞いてくれよ、ハビィ」

『何々?』

「今日、学園に刺客が現れてさー」

『エメラダみたいな魔法使い?』

「いや、葉っぱでラリってた雑魚キャラ。一年坊の町田って奴に任せて、三擊で戦闘不能にした。町田は石破天驚流の才能が俺以上だ」

『凄い一年生が入学したね』

「出来るだけ大切に育てないとな、ああいうタイプはオーバーワークしがちだ」

『突っ走っちゃうタイプか。レイみたいに霊力あるの?』

「分家の血縁者だ。違和感はあったが、霊力はほぼ感じなかった」

『流石は霊能力者』

「インチキ占い師じゃないよ」


部屋の床をよく見ると黒い羽が落ちてる。


「田吾作、来たの?」

『エメラダと一緒に。言い残した事があったって』

「ええー?」


エメラダの伝言は、とにかくハビィを守れという事らしい。ただでさえ高価で取引されるオスの三毛猫だ。全一教会にもヒュムにも狙われやすい。それと、エメラダはハビィに手の内を教えたそうだ。それは、エメラダは土属性で大地との親和性があるが故に反発し合う魔法もあるそうだ。それが空中浮遊魔法。大魔法使いのクララでも浮遊魔法は扱いにくいと言っていた。エメラダは大地との反発で自由自在な空中浮遊が出来るらしい。それと火属性に気を付けろと。火の温度は物理的に上限がないからだ。火属性が究極となったのが光属性だそうだ。


ってか、エメラダは俺の部屋に入ったのか!?


「ハビィ、エメラダはここで話をしたんだよな?」

『勿論』

「ロイヤルちんまんとかやらなかったよな?」

『エメラダのアカウントはランク33。僕と同じ最高クラスだよ』

「スゲーとしか言えない」

『レイはプレー中に肩に力が入りすぎるんだよ』

「苦手は克服したいけど、こればっかりは最高ランクになれる気がしない」

『ドンマイ。エメラダは〝珍世紀オバンデスヤン〟ってゲームもメチャクチャ強いよ』

「何ジャンル?」

『新作の格ゲーだよ、このパソコンにインストールしてくれた』

「それなら勝てそうだな」

『ゲームで対抗意識を持ってる場合?』

「それもそうだな。約2年半くらいで賢人会議が開かれる。プルトンとヒュムの王族をまとめて殺さないとな」

『今日、エメラダが教えてくれた情報によると、小笠原諸島の西之島も候補地だって』

「最近、海底火山で出来た新島か」

『あくまでも候補地だからね。ヒュムの王族は関東地方で開催するのに拘ってるのは間違いないみたい』

「マキも殺さないといけないのかな」

『回復魔法が使えるレイの2個上のヒュムでしょ? 回復魔法は王家の証だから、王族側に付くなら仕方ないね』

「マキは俺の眼を治してくれた。王族側に付いてない事を祈る」

『開催日も正確に決まってないし、王族は全部で100人前後もいるから、逃がさずに殺ってね。後、兄弟が心配だ。猫体実験にされてないといいけど』

「ハビィに兄弟いたの?」

『弥生と一緒に土の中から助けてくれたじゃない』

「イテッ、頭が割れそうだ」


何なんだ、この頭痛は。2年くらい〝や〟から始まる名前? 季節? 言われる度に頭が痛くなる。これも克服したいが多分無理だ。あ、そうだ。バリカンのアホに金属バットで殴られてからだ。それまでに何かあったのか? それか幽体離脱が関係しているのか? 分からん。


『ごめん、レイ』

「いいんだ。多分、霊力が関係してると思う」


ハビィはそれ以降、しばらく喋らなくなった。何かバツが悪いのか?


俺は寝る事にした。


「ハビィ、おやすみ」

『アイム・夜行性、おやすみ』



ーー次の日の朝。おいどんの名前はは珍古賀達也(ちんこが・たつや)でごわす。鹿児島は薩摩出身で横浜陰茎学園の二年生でごわす。柔道同好会の会長を務めてるでごわす。中2で初段を取った有望株でごわす。昔の横浜陰茎学園は柔道の強豪校と聞いたでごわす。しかし、入学した時には部員は2、3人。幽霊部員が5人くらいでごわす。話が違うでごわす。今はおいどん1人で柔道同好会を切り盛りしてるでごわすいわゆる一匹狼(ローンウルフ)でごわす。柔道場の柱に帯を巻き付けて背負い投げや一本背負いの練習、基礎となる受け身の練習を日々1人でしてるでごわす。畳がボロボロでごわす。乱取りがしたいでごわす。おいどんは、ゴールド・メンバーズには加入してないでごわす。でも横浜陰茎学園の男子全員には秘匿性アプリを携帯電話にダウンロードする義務があるでごわす。それでたまに柔道同好会に入会キャンペーンをするでごわすが、無視されるでごわす。悲しいでごわす。


がらがら。誰か複数人が柔道場に来たでごわす。この人達は三年生でごわすな。20人くらい入ってきたでごわす。何事でごわすかな?


「畳、ボロボロじゃん」

「ここが横浜陰茎学園の柔道場か~。体育祭でやる授業とえらい違いだな~」

「お前、二年生の珍古賀だよな。俺達に柔道を教えてくれ」

「マジでごわすか? 入会入部でごわすか?」

「キャプテン・ジャパンに柔道を習えって言われてさ、柔道着とかないけど出来る?」


おいどんは今、猛烈に感動してるでごわす。そして、キャプテン・ジャパンに感謝しているでごわす。多くの人に柔道の良さを知ってもらいたいでごわす。


「三年生の皆さん、まずは受け身をマスターするでごわす、柔道着はその後でも大丈夫でごわす。柔道は、礼に始まり礼に終わるでごわす」


何か急にザワザワしてるでごわす。急に習いたいと言ったのに、何事でごわすかな?


「「「キャプテン・ジャパン、おはようございます!」」」


入ってきたのは、金髪に白い肌、青い瞳、背丈が190センチメートル弱でごわす。瀬名レイ先輩、キャプテン・ジャパンでごわすな。柔道着を着てるでごわす。ただ、白帯でごわす。


「お前が珍古賀達也だな?」

「そうでごわす」

「組んでくれ、久々に柔道をやりたい」

「いいでごわすが、受け身は取れるでごわすな?」


身長はほぼ同じでごわす。キャプテン・ジャパンは武芸全般に秀でていると聞いた事があるでごわす。しかし、怪我をさせる訳にはいかないでごわす。


「大丈夫、大丈夫。行くぞ」


おいどんが構えた時には、キャプテン・ジャパンに袖と奥襟を取られたごわす。八方崩しは前に、大外刈など足技を掛けてくるでごわすな? バタン! 一瞬の事でごわす。八方崩しで前に引かれたでごわす。つまり、反動を利用して後ろに倒す技を使うと思いきや、鮮やかな背負い投げを喰らったでごわす。一本! 裏の裏を取られたでごわす。これが史上最強のキャプテン・ジャパン、瀬名レイ先輩。完敗でごわす。おいどんは油断してないでごわす。本気だったでごわす。おいどんとキャプテン・ジャパンの実力差で負けたでごわす。


「久々に柔道やったけど、楽しいなあ」

「流石、歴代最強のキャプテン・ジャパンでごわす。おいどんも久々に乱取りが出来て楽しかったでごわす」

「柔道同好会はお前1人か?」

「そうでごわす。入会入部希望者が欲しいでごわす」

「これからドンドン二年生、三年生の殆どを入部させる」

「そんなにでごわすか?」


おいどんは視線を下に向けてしまったでごわす。


「心配するな、畳の新調は第4勢力の軍資金からカネを出させる」

「とてもありがたいでごわす」


おいどんは、強くて優しいキャプテン・ジャパンに心から着いていこうと思うでごわす。キャプテン・ジャパンに足を向けて寝れないでごわす。


その日に、正式においどんもゴールド・メンバーズに加入したでごわす。割り振られて、第2勢力の副リーダーとなったでごわす。これから二年生、三年生をビシバシ鍛えるでごわす。

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