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044(エメラダ襲来&秘奥義伝授)

俺は西園寺が運転するセダンで自宅マンションの近くまで送迎してもらった。俺はマンションに歩いて行くと、ピーン。微かな殺気……!? どこからだ? 狙撃ではない。刃物も違う。となると魔法か。


ゴゴゴゴーー!


地震? いや違う。木だ。急速に育つ木々。あっという逃げ道を塞がれた。


「妹が世話になったわね、瀬名レイ」


空中!? 女か、プルトンじゃないな。年齢は二十歳ってとこか。緑色のロングヘアに緑色のローブ、まるでエメラルドグリーンだ、ゆるふわ感がある。魔法使いで妹、クララの姉か。でもクララは姉が居るなんて一言も言ってなかった。


「俺と闘って勝てると思うなよ?」

「そう…………」


スキーン! ザン! 尖らした木の枝で首元を狙われたが、俺はアイテムボックスから刀を瞬時に取り出して木の枝を切った。フライパンが出てたらあの世行きだった。


「悪いがお前に勝ち目はないよ」

「そのようね。まあ、闘うのが目的ではないのだけど。私の名前は〝エメラダ〟土属性の使い手」

「何が狙いだ?」

「何でしょうね。クララが死ぬまで私はプルトンの助手をしていた。クララを殺さないという条件でね」

「一年以上前の話だ。何を今さら」

「私はプルトンを裏切り、マウントトレナイ大学の学生として匿ってもらってるの」


マウントトレナイ大学は異世界人の王族と敵対関係なのか。


「この樹はね、何も貴方の逃げ場を与えない物じゃないの。よく見て」


俺は隙を与えず、周りを見渡す。そうか、そういう事か。


「周辺の防犯カメラに死角を作ったのか?」

「その通り。クララが身を寄せるはずだわ、貴方は強い」


エメラダという女が、アスファルトの真ん中に降り立つ。


「クララと似てないな」

「私達は血が繋がってないの。私達は王国直営の孤児院で育った。クララは産まれながら、膨大な魔力を秘めてた。だから、母体が耐えきれず、母親は帝王切開と同時に亡くなったそうよ」

「エメラダ、お前は王族側か? それとも俺達側か?」

「一年前までなら王国側。今はプルトンを殺したい日和見主義。ね、田吾作」

「何!?」


バサッ、バサッと羽ばたきながら田吾作はエメラダの肩に乗った。


「田吾作! 裏切ったのか!?」

『落ち着け、ちゃんとエメラダの話を聞いてやれ』


ペタ、ペタとエメラダが俺に近付いてくる。裸足か。


「貴方、光と闇の属性を持ってるのに、魔力は殆どないわね。ヒュムではあり得ない。私達からしたら歪な存在よ」

「俺は人間だからな。なあ、エメラダ、手を組まないか? プルトンを倒すために。それが狙いだろ?」

「私はそのつもりで来たのだけど。でも私の魔力では、プルトンの居場所が掴めない」

「それなら柴犬のジョンだ」

『すでに試している。ジョンが言うには、プルトンは魔力を極限まで消せるようだ。ジョンの魔力探知嗅覚は、麻薬は勿論、税逃れのインゴットやワンカートン以上の深刻漏れタバコも見破る』

「クララが生きてる可能性もあるのか?」

「残念だけどそれはないわ。魔力探知回避能力はエルフの特性なの、だからエルフでないクララは魔力を消す事が出来ない」


一瞬の希望が崩れ去った。これでプルトンの殺害は決定だな。クララにチビってた田吾作が姉のエメラダには臆してない。エメラダはクララ程の魔法パワーはないのだろう。


「私を頼りたくなったら、いつでも田吾作に言って。だいたい、マウントトレナイ大学の屋上でガーデニングをしてるから」

「土属性の使い手だから、ガーデニングか?」

「好きこそ物の上手なれ」


ゴゴゴゴーー!


木々が地面に還っていく。エメラダは姿を消した。マウントトレナイ大学に帰ったのだろう。田吾作がボケーっと突っ立ってる。


「田吾作?」

『あ、そうそう。エメラダの事をレイとハビィに伝えに来たんだった』

「寄ってきな、カリカリあるよ」

『ごっつぁんです』


俺は自宅マンションの部屋に帰った。田吾作がエメラダの事を詳しく説明してくれた。


王国直営の孤児院でエメラダは常に土いじりをしてたそうだ。元々、大地と親和性があったのだろう。クララは2歳で魔法の基礎全てをマスターして、3歳で強力な封印魔法をあっさり覚えた。そこをプルトンが目を付け、更に鍛え上げて、クララが10歳の頃には国王から大魔法使いの称号を与えられたそうだ。弟子でも玩具じゃない、13歳の短い生涯、必ず仇を討つ。プルトンは1000年以上、魔道を極めようとしていたが、大魔法使いの称号を貰う前に王国が崩壊した。異世界ヤハウェが生き物にとって過酷な環境になったのは、自分が新たな国王になろうとしたプルトンと、それに唆されたクララが特大隕石を数発、ヤハウェに落としたみたいだ。魔法使いとしては、プルトンより13歳のクララのが上だ。プルトンは複雑だったろうな。


田吾作とエメラダが出会ったのは、今から一年ほど前だそうだ。マウントトレナイ大学の屋上庭園で田吾作がトマトをついばんでいたところをエメラダに捕まったらしい。それから餌を与える条件で、田吾作はエメラダの専属魔獣になったらしい。田吾作、意外とチョロいな。


エメラダは大地と対話が出来るようだ。やろうと思えば、希少鉱物、ダイヤモンドやゴールド、マントルなどを地上に引き寄せる事も出来るそうだ。エメラダは欲がないのだろう、金銀財宝ザックザクハイザックⅢなのに。まあ、その辺は関与しないでおこう。


トントントン。ドアをノックする音だ。誰だろう。


「開いてるよー」


ガチャッと入ってきたのは、じいちゃんだった。


「レイ、久しぶりじゃな」

「じいちゃん、おひさー」

「ほう、猫とカラスを飼っておるのか」

「まあね」


魔獣だってバレないよな? テキトーに誤魔化しとくか。動物と会話が出来るなんて、頭がおかしくなったと思われる。


「レイ、石破天驚流奥義を使ったな?」


え? ああ、ヒグマを倒した時か。


「何年前の話をしてんの。ヒグマがいきなり2頭現れて、被害者も出ちゃったから仕方なく」

「他人の為なら不問ととす」

「それより、じいちゃん、町田って奴に石破天驚流の事をベラベラ喋ったでしょ? 一子相伝はどこ行った」

「ぐう…………。ちょっと酒が入っとっただけじゃ、バカもん」


バツが悪いか。


「で、じいちゃんが長野の山奥からわざわざ来たのには訳があるんでしょ?」

「お前に石破天驚流秘奥義を伝授する」

「え? マジ?」

「立ちなさい、レイ」


俺は立ち上がる。秘奥義だよな? こんな狭い部屋で?


じいちゃんが、右手の人差し指に念を込めた。マジでここでやるつもりか? じいちゃんの指先が額に近付いてくる。怖い…………。パチン。


「え? じいちゃん、デコピンしただけ?」

「秘奥義はな、霊力で相伝される。ワシの霊力を分けた。これで秘奥義が使えるぞ、ホッホッホ」

「具体的に何が出来るの?」

「もがけ。自分で見付けるのじゃ。そうでなければ、真の相伝とはならん」

「分かったよ、俺、やってみるよ」

「その意気じゃ、何千何万という武士の霊力じゃ。全一教会に気を付けるのじゃぞ、レイ」


え、じいちゃん、全一教会の事を知ってたんだ。戦ってるのは俺一人じゃない。


ガチャッ。じいちゃんは部屋から出て行った。ありがとう、じいちゃん。

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