043(活きの良い一年坊)
ーー俺は、弟西園寺の運転で横浜陰茎学園に着く。何やら校庭でタイマンバトルが始まってるようだ。一年坊だな。二年生と違って活きの良い奴らがいるかもしれない。
「キャプテン・ジャパン、どうします? 多分、一年生が二年生をボコってるみたいですけど」
「やらせとけ、俺は後継者を見極めなければいけない」
「あのケンカしてる一年生は、町田ゼルダ君ですね」
「誰だ?」
「暴力少年団っていう中学生中心の暴走族のリーダーをやってた人です」
「ほう、活きが良さそうだな。ちょっと、ちょっかい出してくるか。西園寺、近くに停めてくれ」
「分かりました~」
西園寺はセダンを近くに停めた。俺はシートベルトを外して、自分でドアを開けて降り立つ。この町田って奴、二年生をのしてる。次は俺か。
「おいおい! 偉そうに車で来てんじゃねーよ!」
「威勢は良いな。だが、実力はその程度か?」
「この上級生、もう気絶してるぜ? お前も倒してやる! 白人野郎が!」
「殺そうか」
相手はガキだとはいえ、ミックスルーツをバカにすると死だ。
「キャプテン・ジャパン、やっちまえ!」
誰かが叫んだ。暴走族のリーダーとはいえ、ガキ相手に俺が出る幕もないか。今の一声で冷静さを取り戻した。
「あんたが瀬名レイか?」
何だろう? 町田って奴が急にもじもじし出した。
「そうだ。俺が横浜陰茎学園、ゴールド・メンバーズ、キャプテン・ジャパン、瀬名レイだ」
「俺は強くなりたい。俺に石破天驚流を教えてくれ」
なぜ、コイツは石破天驚流を知っているんだ? あ、じいちゃんと会ったとしか考えられん。石破天驚流の奥義、秘奥義、亜型奥義は一子相伝。宗家と分家、あとはパパとママしか知らない言葉だ。さてはじいちゃん、酔っ払ってたな? 口が悪く軽いんだから。
「なぜ、石破天驚流を知っている?」
「瀬名源一郎っていうじいさんにコテンパンにやられたから。キャプテン・ジャパンは、じいさんと互角の戦闘力なんだろ?」
「いや、じいちゃんのが一枚も二枚も上手だ」
「俺に石破天驚流を教えて下さい!」
町田って奴、土下座して懇願してる。だが……。
「悪いが、教える事は出来ない」
「お願いします! 何でもしますから!」
どうしたものか? 本当なら、こういう活きの良い奴に…………。ダメダメ、石破天驚流は一子相伝。でもヒントくらいならいいか。
「石破天驚流はな、石を砕き天を驚かすと書く。ヒントだけなら教えてやるよ」
「何でしょうか?」
「拳を傷めず岩を砕け。まずはそこからだ」
「はっ!」
「何でもするって言ったな」
「は、はい!」
「ボコった二年生を保健室に運んでやれ。それから仲直り」
「分かりましたー!」
町田は直ぐに行動に移した。二年生の脇を抱えて立ち上がる。
「すいません、保健室ってどこですか?」
「昇降口を入って右に進め」
「ありがとうございましたー!」
町田は素直な奴だ。向上心も人一倍ある。これは俺が横浜陰茎学園を卒業したら、次期キャプテン・ジャパン候補だな。しかし、俺の時もあったが、三年生でもない奴がキャプテン・ジャパンになるのは、やっかみもある。俺が二年生の時は、一個上のバリカンのバカがキャプテン・ジャパンになりたがったが、鈴木がキツく俺を推してくれた。ゴールド・メンバーズの体制が不安定だったから、鈴木は卒業しても時々、様子を見に来てくれていた。今度、ち○んこダイニング・タツに行った時は鈴木を探してみるか。
俺は、授業が始まる前に秘匿性アプリで三年生の上層部と準ずる奴らを作戦会議室に召集した。俺は教壇に立つ。
「皆、聞いてくれ。俺が33代目キャプテン・ジャパンになる事に相違ないな?」
「「「オオーー!」」」
「「「勿論だぜ、キャプテン・ジャパン!」」」
「「「アンタが最強!」」」
皆との繋がり。俺は友達を求めて来たが、良かった。女郎蜘蛛のリーダーは、鈴木の妹、鈴木米子になるだろう。
「ここ一年半、特にトラブルや噂も聞かない。だが、油断大敵。全一教会と異世界人はいつかここを狙ってくるだろう、それは奴らにとって俺達が邪魔な存在だからだ」
「「「はっ!」」」
「三年生諸君、二年生と一年坊を鍛えてやれ。俺からは以上だ。意見ある者はいるか?」
「一つよろしいでしょうか!」
コイツは、第2勢力のリーダーだ。何だろう?
「言ってくれ」
「小耳に挟んだのですが、石破天驚流とはどんな流派ですか?」
町田との会話を聞いていたか。
「他言無用を誓うなら教えてやる」
「「「オオーー!」」」
「ならば。石破天驚流は、戦国時代の合戦で刀や槍を折られても格闘で敵を倒す殺人拳、俺はその石破天驚流の師範代だ」
「我々にも教えて下さい! それなら大幅な戦力アップに!」
「「「オオーー!」」」
「「「俺達にも教えてくれーー!」」」
ガヤガヤ煩い。ま、仕方ないよな。
「静まれ!」
ピタッと静かになった。統制は執れてるな。
「石破天驚流を教えて欲しければ、まず、100メートル走で9秒80を切れ。それと拳を傷めず岩を砕け。これが出来たら基礎だけは教える」
「「「オオーー!」」」
皆、ビビると思いきや、やる気満々だ。陸上の国際大会で銅メダルが取れるくらいの速力だよ? ハードル上げたつもりなんだけどな。
「それでは、教室に戻ってくれ。散会!」
「「「はっ!」」」
俺は、教室に行く。先に山田が戻っていた。山田は一年生の時から同じクラスで隣の席。第1勢力のリーダーだ。ケンカはそこそこ強いが、ちょっとメンタルが弱いかな。俺は、山田を友達だと思ってるから呼び名はレイとしてる。俺は自分の席に着く。
「俺のスピーチ、どうだった?」
「レイ君は凄いよ。僕達、史上最強のゴールド・メンバーズだね、敵無しだよ」
「今のところはな。気のせいかもだけど何か嫌な予感がする」
「レイ君の勘て外れる時があるから。アイ・ビリーヴ・ア・リトル」
「どういう意味?」
「少し信じるって意味だよ。レイ君、サンフランシスコ生まれって割には英語の成績悪いよね」
「どこで生まれるかより、育つ環境が大切だ。最近の携帯電話は翻訳機能搭載が当たり前だしな」
俺は昼休みに秘匿性アプリで二年生に指示を出す。内容はこうだ。一年坊にゴールド・メンバーズの仕組みを叩き込んでおけと。呑み込みが早いのか、放課後には一年坊全員が横浜陰茎学園と警察の繋がりを理解したようだ。麻薬撲滅が主な任務だ。
俺は、西園寺が運転するセダンで下校した。




