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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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第78話 黒船来航

皇紀2251文禄4年(1591年)春。


「太政大臣様、留め置いた者どもは、もはや害はありませぬとのこと」

「おお、それは重畳じゃ。

早々、帰還計画を進めてくれ」

「は!」


アステカ・インカ解放から2年、中南米カリブ海を制圧、ルソンやメヒコ、パナマでの抑留者の価値は消失した。


「・・・ということで、もはやそなたちを留め置く理由がのうなった。

すまんかったな」

「い、いえ、いまさらです」

「ハハハ、すまんすまん」

「考える時間がたくさんあったのは良かったですよ・・・あなたがたは・・・我らにできないことを成し遂げております」


「ん?どういう?」

「マラリア対策で、カヤやカトリセンコウを配っていただいた。

死ぬ者が目に見えて減ったのです」

「そりゃ、あたりまえだろ」

「・・・いいえ、我々など・・・病人を追放して殺していた・・・」

「そりゃ、あかんわ」

「ええ、自分たちが助かるためにはなりふり構わない・・・弱い人間です」


「人間なんてそんなもんや。

わいかて、生き残るためにたくさん殺したわ。

ほんの十数年前の我が国は戦国時代や。

血を血で洗う生き残り合戦やで、宗教の恐ろしさもあったわ。

死ねば極楽ちゅう一向宗なんぞ、刀で切っても切っても向かってくるんやで。

今でも夢に見てうなされるわ」


「そうでしたか」

「だがな、殺さず生かせよと我が殿が言うようになってからや。

全てが変わったんや・・・そやな、あれからや」

「罪を許すと?」

「ちゃうで、われらに罪を犯させたくないゆう思いやと、今になれば思う」


「ああ、そうでしたか・・・うううう」

「まあ、あんさんの神様も悪い人やないと思うで。

ゆがめたものがいるちゅうことや、帰って言うたれや」

「はい、必ず」


マニラ鎮守府で、九鬼澄隆とペニャロサは、笑って握手をした。

残った者も多かったが、日本から移動したガレオン船も含めた43隻の大船団は日本皇国軍艦隊に護衛されて帰国の途についた。

大西洋もインド洋もカリブ海も、日本皇国海軍の支配下にある。

メヒコやパナマの収容所からイスパニアへ帰国する人々も45隻の大船団の乗客となってイスパニアを目指した。


「お、おい、あれは」

「あんな大船団が・・・」

「逃げろ、ブラックデビルシップに守られてるぞ!」


イングランド海軍(海賊)は恐れをなして逃げるだけだった。

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