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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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閑話14 皇国軍楽隊秘話

「ホラ貝とか小鼓もやけど、太鼓も間延びしよるんじゃ~」

「雅楽じゃ行進にならんでナ~」

「なるほどね~」


貴丸は、合戦でホラ貝が使われているのは前世の時代劇で見たことがあるけど、実際の音を聞いたらそんなに大きな音というわけではなかった。


「大きな音を出すなら、喇叭(らっぱ)かな」

「喇叭とはなんぞや?」

「金管楽器だよ・・・ええと、貝の代わりに真鍮の管を使うと高い音から低い音まで大きさ長さによって自由に変えられるし音も大きくなる。

管は曲げやすいしね」

「ほ~う」

「太鼓は薄板の胴に真鍮枠に革を挟んでネジで強く張ると硬い音になるのかな。

シンバルも良いかな、真鍮の丸いのをたたき合わせて大きな音を出す」

「鐘よりは大きな音が出そうやナ」


戦乱によって京の楽人は地方へ四散。

楽譜などの資料や舞楽装束の大半が焼失し、多くの演奏技法や曲目が失われ宮廷音楽としての雅楽はほぼ断絶してしまった。

残った楽所や各楽人によって細々と伝承される状態が続いていた。

一方、四天王寺など京から離れた寺社では雅楽の伝承が続いており、正親町天皇や後陽成天皇が、四天王寺、興福寺などの寺社や地方から京に楽人を集め、雅楽の関わる宮廷儀式が復興されている。


さておき、数年前に軍楽隊の相談を受けて、アドバイスをしたことがあった。

復活した宮内省宮廷楽部は、地方で良い具合にくだけてしまった楽人達が多く、皇国軍隊の行進曲を演奏する軍楽隊を組織すると、なかなかのはっちゃけぶりを見せたのだった。


行進曲は、人の歩調に合わせる関係から2/4拍子または2/2拍子、さらには3拍子の要素(3連符的な速度)が入った6/8拍子などの2拍子となる。

今までの日本にはない楽曲になる。


皇国海軍曲、「旭日に碇を上げよ」「太洋を越えて」「同胞を救いに行かむ」

皇国陸軍曲、「日の丸に集え」「大義を貫く我ら」「生きて故郷に帰りなん」


しばらく後に、軍楽隊の演奏を聴いた貴丸は唖然とした。


(なんやこれ・・・どっかで聞いた曲調やん・・・どこやったっけ?

・・・あ、トルコの軍楽隊や~~)


ダダン、ダダン、ダカダカダカダカ、ダダン、ダダ~ン・・・。

ぱ~ぱらぱ、ぱぱぱらぱ、ぱぱ~ぱぱらぱらぱ、ぱらららぱ~~・・・


(ひ~~耳について離れんわ~~)


楽隊先頭の指揮者が錫杖をもってリズムをとる。

自走車に大太鼓が積み込まれてドンドコ打ち鳴らす。

鼓笛隊が、腰の小太鼓をリズムよく打ち鳴らし。

真鍮製の横笛と小中喇叭がメロディー、大喇叭がブバブバと合いの手を入れる。

要所でシンバルがジャ~ンとかき鳴らし、メリハリをつけている。

その後に2大隊が10列行進、儀仗鉄砲を持っての動きを揃えている。

国旗や錦旗が彩りを添えていた。

砲塔を備えた自走車が続き、また3大隊が続いていく。


(軍事パレードやんか~)


「どないだっか、安倍殿」

「喇叭はええやろ、高音中音低音とあんじょうでけたで」

「太鼓もシンバルもようできたやろ」

「ひゃ、ひゃい、すごいわ、ほんまに」


雅楽は日本の曲調に変化しているが、大陸の音楽を濃厚に残す曲もあるらしい。

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