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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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第64話 アイヌ民国は(1)

皇紀2246天正13年(1586年)夏。

貴丸は22歳、前世の年齢を過ぎた。

今世の妹、ウメが18歳とサクラが14歳だ。


アイヌ民国は大自然に負担をかけない発展を目指している。

むやみな都市開発はないものの、医療体制は充実している。

一般の衛生意識も生活環境も向上し、新生児の死亡はめったに無くなっていた。


ウスケシは軍港・商業港を整備、アイヌ民国の行政の中心地に変貌中だ。

ここを選んだのは、良港であることも一番だが、近くにコンクリートに欠かせない石灰岩鉱山があることが大きい。

また、ユペツ温泉がニセコと同じくリゾート化して賑わっている。


モ・ルエラニ港を整備、ヌプル・ペツ温泉もリゾート化するはずだ。

ノッカ・マップ港はルートンモングルとの交易拠点。

アパシリは漁業(特にホタテ漁)の盛んな集落。

チユプペトは、縄文期から開かれている最も大きな集落だ。

ユーパロは炭鉱開発拠点の集落として整備された。

カラプトやユーパロの石炭を改質した骸炭(コークス)は余剰分を釜石に輸出している。


ヤㇺワッカナイ港はレブン・リシリ・カラプトとの交易拠点であり、今はアイヌ民国定期航路の港の一つ、オタ・オル・ナイ港、ヨイチ港、イワウナイ港とともに栄えている。

主要なコタンにはそれぞれ政府出張所が開設されている。

困ったことだが、アイヌ人はお金の概念が無いというか嫌ってる。

貨幣経済に移行するのには数十年の時間が掛かるだろう。

政府出張所は、交易所でもあって、人々は日本皇国を含む各地の産品を自分の持ってきた物と交換する仕組みになっている。

渦巻き模様(モレゥ)や、とげ模様(アィウㇱ)を用いた様々な産品も持ち込まれている。


「兄様、学校の教科書はできてるの?」

「はう・・・」

「なにしてんのよ、兄様がやらなくて誰がやるの!」

「ううう・・・あちこちからお呼びが~」

「「まったく~」」

「い、印刷のあれができたらちゃんとするから」

「「しかたないわね」」


(こいつら、マジこえ~~、嫁のもらい手が無いぞ)


「兄様、今変なこと思ったわね!」

「嫁には行くわよ!」

「はう!」


アイヌには入れ墨文化があったが、感染症などの危険性を広め、シャボンを使う衛生教育から、若者はやらなくなっていた。

貴丸のハポにはミチが待ったをかけて祖父母ともめたらしいが、今では何も言わなくなっている。

もちろん、妹達は結婚しても入れ墨はしないだろう。

幼馴染みのヤイヌには絶対させない。


アイヌ人達も温泉リゾートで体験した和人食に興味津々、雑穀がゆを食していたコタンもあり、さほど忌避は無く、輸入した米も食べるようになっている。


「兄様、今日は夕飯に毛蟹鍋がでるわよ。

カプタインの家族も呼んだわよ」

「え、そうか、嬉しいな、えへへ」

「籠漁は兄様が考えたんでしょ、たまには良いことをするわ」

「た、たまかよ」

「ふらふらと出かけてることが多いからよ、もう!」

「だから~呼び出されるんだから~」

「「とにかく、ちゃんとして」」


(理不尽な・・・ち!)


「「ん?」」

「な、なんでもございません。

はい!」

ウスケシ(函館)

ユペツ(湯川)

モ・ルエラニ(室蘭)

ヌプル・ペツ(登別)

ノッカ・マップ(根室)

ルートンモングル(千島アイヌ)

アパシリ(網走)

チユプペト(旭川)

ユーパロ(夕張)

ヤㇺワッカナイ(稚内)

レブン(礼文島)

リシリ(利尻島)

カラプト(樺太)

オタ・オル・ナイ(小樽)

ヨイチ(余市)

イワウナイ(岩内)

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