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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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第61話 ヌルハッちゃんの覚悟

「御苦労、ヌルハチ」

「大変だったようやな」

「ケイジ殿、ゴエモン殿、手助けに礼を言う」

「三郎殿も、身内の裏切りにも耐えて耐えて、ついには世を開いたのだ。

まあ、儂なんかが言うのもなんだがな」

「そやで、こんなんはよくあることや。

あんさんは、これからやらなきゃならんこと仰山あるで」

「うむ、ありがたい・・・オレは・・・」


幼い頃から聡明で、力が強く武術を好むヌルハチ、9歳の時に母エメチが死んでから、父の後妻との確執から14歳の時に家出。

母方の祖父ワンカオの元へと身を寄せた。

ワンカオは武芸に秀でた孫をずいぶん可愛がってくれた。

たが、明は祖父を殺した。

復讐を胸に秘めて、明の李成梁の手駒になることにも耐えてきた。

誤解もあるだろうが、すべては祖父ワンカオの雪辱を果たしたいためだった。


「・・・そうか、おまえは明に復讐したあとどうするのだ?」

「え?」

「そんなのは私闘だ。

三郎様は日の本を統一し、戦のない豊かな国にしたいと願った。

だからこそ大望を果たせたのだぞ」

「ううむ・・・」

「覚悟せいや」

「あ、ああ、そうだな。

オレは、マンジュ族が二度と虐げられることのない強国を作る。

・・・伯父上、協力してくれ」

「うむ!」


「二人ともゆっくりしていってくれ」

「ああ、しかし、ホンジ達が大変なようだ。

そっちも手伝うつもりだ」

「そうやな」

「タカマルはどうしたのだ?」

「ああ、あれは大仕事が終わったらふぬけてしまってな~」

「どういうことだ?」

「南に大きな大陸があるのだが・・・」


ジャギン部・スクスフ部をまとめたヌルハチはその後、ジェチェン部、ワンギャ部、ホホリ部を帰順させ、建州マンジュ五大部を統一した。


ーーーーーーーーーー


李成梁は、ある程度大きな勢力の後ろ盾となって操り、女真を治める思惑で、その候補の一人が建州女真の中のヌルハチだった。

成梁の思惑は上手く行き、ヌルハチの勢力が増すと李懐に入る賄賂の量も増えた。

人は多くを手にすると減ることに敏感になるらしい。


「なに!李王朝が直接朝貢の船を出していると?」

「はい、将軍の手をわずわらせたくないようですが?」

「バカな!」


本来なら問題無いが、挨拶という名の賄賂が李成梁に入らなくなる。

李成梁は朝鮮の李王朝とは関係があり、その腐りきった内情もよく知っている。

14世紀末、高麗国を簒奪した李王朝は建国から明の傀儡政権ともいえる。

搾取される民をよそに、利を求め派閥闘争に明け暮れる政権上層部という構図だ。

1567年の14代国王宣祖以降、朝鮮の官僚派閥は士林派で占められたが、8年後には、その士林派が東人派や西人派に内部分裂し抗争している。


「東西の対立かなにかはわからぬが、片腹痛いわ」

「さぞや、その者どもは金にまみれているのでは?」

「ふん!思い知らせてくれよう」


李成梁は、海西女真の手駒であるイェヘ部首長のナリンブルに連絡した。

ナリンブルは野心家で、李成梁に近づき、ヌルハチに対抗心を持っている。

ヌルハチは素知らぬ顔で、李成梁の下知に従うのだった。

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