第53話 シベリア防衛戦(2)
火縄銃を装備しよく訓練された軍隊だ。
雷帝と呼ばれるイヴァン4世は30年前、ヴォルガ川中流域にあるカザン・ハン国を侵略し、その後、ヴォルガ川がカスピ海に流れ込む辺りにあったアストラハン・ハン国を滅ぼし支配下においた。
コサック兵はそれらの侵略戦にも加わっていたはずだ。
門を入って直進すると広場があり、かがり火が灯されて明るくなっていた。
突撃した兵達が立ち止まった。
待ち構える鎧兜に身を包んだクチュム・ハンが、尊大に宣言した。
「我こそはクチュム・ハン、シビル・ハン国の王である。
コレより東に行くことは許さぬ!
イヴァン雷帝に伝えよ」
「ふん!撃て!」
クチュム・ハンの前に歩兵が盾を構えた。
バババ、バン、バン
「ん、やめい」
「おかしい・・・」
「敵対行為とみなす。殲滅せよ!」
「「「「「おお~~~」」」」」
「打ち方開始!」
家屋に隠れていた銃兵が姿を現し、いっせいに銃を構え引き金を引いた。
ズドドドドドン、ズドドドドドン、ズドドドドドン
三百丁の連射で多数が倒れても、流石に強兵、槍を振りかざし乱戦に突入した。
「慶治、危ない!」
「ガハハ、戦じゃ戦じゃ、我と思わんものは掛かってこいや~~~」
「あ、ああ~あ」
「かかれ~~~」
元々の兵数差は覆らない、敵兵は次々に倒れていった。
「我は隊長のイェルマークだ。
クチュム・ハン、勝負せよ!」
「おお~~」
「や、やめよし」
「いや、やれや、止めんな小童!」
袋のネズミと悟ったイェルマークは覚悟を決めたようだ。
槍と槍でのタイマン勝負、数合やり合った後に、クチュム・ハンの一撃が見事に喉を貫き勝敗は決した。
「我らが勝利じゃ、勝ちどきをあげい!」
「「「「「「「「えい、えい、おおおおおお~~~~~」」」」」」」」
「「「「「「「「えい、えい、おおおおおお~~~~~」」」」」」」」
「衛生兵は生存者を探せ、2人ついて不意打ちを警戒するように」
「「「は!」」」
重傷者に止めを刺し、軽症者を治療し捕虜にしたのは30人程度。
こちらは、死者0に重傷7名は軍医がすぐに治療して助かるとのことだ。
終わってみれば圧勝だった。
「こいつら2人は補佐官か、上等な服だわ」
「城外に墓穴を掘り、死体は焼く、病気を持ってるかもしれん」
「「「は!」」」
「見事に闘った。
遺髪と形見は国に返してやろうず」
「うむ、承知した」
言葉のわかるものが捕虜に伝えると、喜んだようだ。
仲間の遺髪と名前のわかる遺品を小袋に入れさせ、遺体は運ばせた。
遺体を荼毘に付し、大きな石を墓標にする。
クチュム・ハンは、墓前で瞑目していた。
捕虜達には、水食料を積んだ驢馬を与え、ストロガノフ家の居城オリョール・ゴロドクに帰還させたのだった。




