第43話 縁談
天正8年(1580年)初春。
貴丸は織田家の私邸に呼ばれた。
大路小路が元に戻され、二條城は破却されて跡地を織田家が拝領、再利用された部材は、仙洞御所の建築にも使われている。
「どや、三法師や、かわゆいだろ」
「いつの間に、勘九郎に嫁と子が・・・」
「た~け、元服したら嫁を貰わずしてどうする」
「ふ~ん」
「ま、貴丸はまだ童じゃろうが」
「ギク!」
「まさかあっちじゃ無いだろうな」
「ごら!」
「とのさま、あのお話を・・・」
「う、うむ、どうだ、嫁を取らぬか、五歳程か下かと思うが」
「茶々様は、お市様の御子なのよ」
「ふえ!」
(マジかよ、淀の君か・・・)
「どうじゃ、お市様と新九郎殿が是非にと言ってきておるのだ」
「んん~~~~国が違うのは大きいわ」
「う、うむ」
「わいかて、嫁候補はメッチャおるんや」
「・・・うそつけ」
「ほ、ほんまに・・・一人おる」
「なんじゃ、そうならそうと早く言え、た~け」
「厳しいの~」
国が違うと言われ、お市様も新九郎様もあきらめたようだ。
貴丸という存在は織田家では大きなものになっている。
信長が勝手なことはよせと言い、それ以降の縁談は無くなった。
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「イックシ」
「あれ、ヤイヌ、大丈夫?」
「なんでもない」
革の加工にはいろいろな手法がある。
ホンジが嫁の家族に大陸の方法を伝え、ヤイヌはすべてマスターしていた。
そして、発展させている。
「かかとに鯨の腱を使うのは良かったね」
「ん」
ケリの改良はタカマルとふたりでやったヤイヌの誇りだった。
スパイクという、鉄の歯も一生懸命工夫した。
他の女どもは、タカマルが知恵を喜ぶのを知らない。
工夫を見せたらタカマルが凄く褒めてくれる。
「帰ってきたのに、オイナとちょっとしか会えなかったでしょ?」
「いいの」
「ふ~、なんかね~」
「ハポは、ミチが帰ってこなくて不満?」
「うふふ、あれで、あたし以外には見向きもしないから」
「ん」
貴丸の幼馴染み、ホンジの長女ヤイヌは、1歳下だ。
(あたしは、オイナが思ってくれるだけで凄く幸せだもの)
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「久しぶり~おしろいのにおいはのう~いいの~」
(慶治、最低やぞ)
「あれあれ、お兄さん」
「はひ!」
「もうもう、うちの乳をみてからに~」
(ひは~、バインバインやないか、こんなのありか~)
翌朝、五条河原で身ぐるみ剥がれて転がっていた主従は、なにも無かったことにしたのだった。
天罰が下ったのだろう。
多分。




