第40話 バイカル湖
「・・・どこでそれを・・・密かに準備しておったのに」
「ヌルハチは天馬、きっと祖父の恨みを果たす、仕えて支えるのが吉だ。
ニカンワイランとノミナは敵、明と通じてお主らを裏切る」
「あ、あやつらならありうる、クソどもが」
「明は軽挙妄動では倒せん、ヌルハチに従って臥薪嘗胆や」
「「「ガシンショウタン?」」」
「あう・・・先王が呉に負け、越王になった夫差は復讐を誓い、軍備を充実させ、自らは薪の上で寝る痛みでその屈辱を思い復讐を果たした。
降伏し捕らえられた呉王勾践は馬小屋の番人にされ苦労を重ね、越に帰国した後は民衆と共に富国強兵に励み、一方で苦い胆を嘗め屈辱を忘れず、ついには越を下したという話だよ」
(アセアセ、『十八史略』とか読んでね~か)
「うむ、屈辱は心に秘めて時期を待てと言うことだな、納得だ」
「ヌルハチには昇竜の気概がある。
きっとマンジュ族を統一するだろう」
「おおおお、きっと我が甥を支えよう。
お主達の望みは何でも叶えようぞ!」
(チョロいんで良かったわ~~)
アタイの先鋭8騎が護衛に付き従い北西に進む。
放牧の蒙古族ともよしみを通じながらの1ヶ月半、バイカル湖に到着した。
大昔から、アイアンロードとも言われる鉄の交易文化圏が存在している。
「まだケツが痛いわい」
「ボンボンは軟弱やな~」
「一皮剥けたら大丈夫だろうが、見せてみろ」
「・・・やだ。
あっちの気は無いからな」
「犬じゃあるまい。
小童のころはなかなかの美童でな。
三郎様の色小姓になりおって、うらやんだものじゃった」
「あんなのが、げげげ~~」
「変な声出すなや。
それにしても、大陸の馬は丈夫やな、長距離に馴れとるわ」
「だな、もっと時間が掛かると思っていたぞ」
毛皮の交易をしているロシア人が徐々に勢力を伸ばしているらしい。
蒙古族の長ゴルインが同行を申し出てくれた。
「話を聞いて納得したのだ。
オロシャの強欲な毛皮商人の噂は聞いていたから」
「そうやったか」
「たしかに、あそこを抜かれたらこちらにも被害は及ぶと思うのだ。
我らも含めバイカルの恵みを4民族が頼りにしておる。
強欲な者どもは放ってはおくまい」
「卓見や・・・バイカルは淡水湖ではこの大陸最大なんやで」
「ほう」
「西のバルハシやカスピは塩水湖やろし」
「よく知ってるな、塩を交易しておる」
「大昔、バイカル湖周辺は大いに栄えたけど世界が凍った。
多くの部族が、東の氷結した海を渡って暖かい土地を求め移動したらしい。
我らの民族もや・・・多分」
「それなら同胞ではないか。
心配して来てくれたことを神に感謝しよう」
「仲介よろしくお願いやで」
「任せな、もう他人行儀は良いだろう。
馬乳酒をグッといけ」
「はう!」
「お仲間はもうできあがってるぞ、楽しい奴らだ。
ハハハハ」
「「「「アハハハ~~」」」」
(もう~ヘベレケやん)
旅の一行にゴルインらの8騎が増え、約1ヶ月半で首都カシルイクに到着した。




