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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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第38話 願い(2)

「ミチ・・・黙っててごめん」

「いやいや、あたりまえや、はっきりわかったわ。

カムイがお前を寄越したんやろ。

ワイが生きてカラプトにたどり着けたんもカムイのおかげやろな。

あんときゃ、死ぬと思ったわ」

「そうなんか・・・」


「アイヌ民国はまかせい、大陸に渡るのやろ?」

「うん、最初は少人数で話しに行かなくちゃと思ってる」

「ホンジや王寧が役に立つやろ」

「アイヌ人は強くないし・・・」

「まあ、そやろな」

「和人はどうするかな」


ーーーーーーーーーー


天正7年(1579年)春。

貴丸は15歳、和人のような元服はない。

背は五尺八寸と大柄になった。

前世よりも武人向きの体で、弓矢や鉄砲に刀槍も勘九郎に引けを取らない。


「前田慶次郎じゃ、よろしゅうな」

「石川五右衛門、首領の命令やから仕方ないわい」


(マジか、慶次郎は記録もあるけど、石川五右衛門はいたんか)


「五右衛門はん、霧隠才蔵って知ってる?」

「なんやそれ、知らんわ」

「あ、そか~」

「五右衛門は伊賀のしのびか?」

「まあ、裏働きやし、依頼もぱったりのうなったんやで」


「ふふふ、戦働きは某に任せよ、ちぎっては投げちぎっては投げ~」

「・・・二人とも1回頭を剃って」

「「へ?」」

「大陸でそげな武家髪は目立つやんか。

総髪にしろや」

「「え~~!!」」


勘九郎が行きたがったけど、泣く泣く諦めた。

かわりに紹介されたのがこの二人。

厄介払いとも言う、多分。

いったん、カラプトに戻って準備をすることになった。


「とりあえず、建州のアタイ・ジャギンと会うんや。

ホンジと面識があるんやね」

「親戚と言って良い、アタイの父親とワイの母親が従兄妹だ」

「・・・まあね」


(アタイ・ジャギンって、清の太祖ヌルハチの伯父にあたるからびっくりだよ。

ヌルハチは勘九郎の2歳下、オレの5歳上か)


「便宜を図って貰い、蒙古族と繋ぎを取って、シビル・ハン国まで行く。

状況を見ながら1年がかりでも帰れれば成功やな」

「明の遼東総兵は優秀ね、気をつけないとね」


遼東総兵は、明の征夷大将軍のような軍人、夷は女真マンジュ族だ。

朝貢の利益を餌に内部分裂をあおって鎮撫している。

王寧は事情通なので心配げだ。


「今の遼東総兵は李成梁(りせいりょう)、朝鮮李氏の流れらしいよ」

「よう知ってるな」

「九州征伐で南蛮人や明人を捕まえて詮議してるやろ。

倭寇や朝鮮海賊も交じっておって、そっからの情報や」

「だいぶ奴隷が連れ去られてるようや、バテレンの坊主が嘆く程らしいわ」

「そのうち騒ぎ出すやろ、琉球とはやりとりしてる?」


「島津が動く予定や、大友はいろいろ元凶やし、あれはあかんわ」

「島津は強かったぞ、戦アホが多い」

「慶治はんも参戦したんでっか?」

「鉄砲で遠くからバコバコだな、つきあいきれん」

「あ、そ」

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