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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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第16話 尾張津島

「イタガラスで本格的な羅針盤もできた。

レンズで望遠鏡も作れたし。

関船のほうも改良して船足が伸びたね。

みんなやるもんだね、ミチ」

「大改造だな、2本帆柱だぞ」

「操船しやすいってみんな褒めてたよ」

「関船の水夫達も勘が良いな」


水平板や凹凸片レンズの鉄型を作って、融けた鉛白入りガラスを流す方法が完成していた。

飲み物を入れるギヤマンの方は鉛白を使わないように釘を刺している。

凹凸ガラスは余分を切って研磨し、筒にはめて伸び縮みする単眼望遠鏡の完成だ。

三角帆の威力でタッキング航法、羅針盤も揺れに強い舵室の設置型になった。

6月末に津軽海峡を通過して太平洋を南下。

単眼望遠鏡で地形を確認しながら、黒潮に乗って約5日の旅、余裕で尾張の津島に着岸したのだった。

高嶋屋も小浜に本陣を移し、直で織田領へとの依頼だった。

岐阜城下への輸送の隊列に加わって村井屋敷に投宿し、信長に拝謁した。


「大義であるぞ、ほんに嬉しいわ」


(織田包囲網で一番苦しい時期だもんね、負けが込んでるし)


「こちらへの航海も問題なく、2ヶ月毎にお運びできもうす」

「うむ」

「目録には書いてないけど、航海術の道具を持ってきたよ」

「なんじゃと!」


羅針盤・六分儀・望遠鏡の3点セットを行李から取り出した。


「大陸で発明されて南蛮で改良発展してるのと同じものやで。

これで夜間も何処にも寄らないでつごう6日間やった」

「であるか、たくさんあるのか?」

「今回は、この3組お渡しできるで、次回に5組はできとる」

「全部買う、組2百貫、いや3百貫でどうじゃ」

「金はもらっても使えんし、紙や筆が欲しいんやけど」

「美濃紙ならたくさんあるわい、何につかう?」

「アイヌの書き言葉を作るつもりなんや、知恵を伝えるためや」

「であるか」


夜は料理人達の腕に驚いたり、奇妙丸や子供達とも遊んだりと楽しんだ。

若干、傳二郎は青くなっていたが。

2日後には好奇心の塊である信長ももちろん、奇妙丸や九鬼水軍の九鬼嘉隆・澄隆も加わって、津島沖で操船を披露した。

みんなが大はしゃぎで日頃の鬱憤を晴らしたようだ。


「向かい風でもジグザグと進めるとは恐れ入ってござる」


(わあ、ジグザグがアイヌ語だと思ってるよな、まいっか)


「この帆は木綿でござろうか?」

「うん、麻糸や綿糸を大量に仕入れたから、撚糸にしてタールに浸して防水して編んであるよ、縄もね。

帆にはハトメを縫いつけて丈夫にしてある」

「この小早は独特ですな」

「大きな木をくりぬいてるから、せいぜい12間ぐらいまでで細長くなる、

水切りが良くて早いし、舳先を敵の船にぶつけても壊れないよ」

「土手っ腹に穴を開けられたら恐ろしいのう」

「先端を尖らせて鉄でもかぶせたら無敵やろうな」

「そりゃえげつないのう」


流石に九鬼水軍の水夫達は飲み込みが早く、滞在中は毎日来て訓練していた。

船大工も来て、ああでもないこうでもないとうるさいと猪之助がぼやいていた。


「猪之助殿、しばらく滞在して指導してくれないだろうか?」

「へ?」

「帰りは関船だけでええわ、小早ごと残ったらええやろ」

「安倍殿、かたじけない」

「しかたないわ、ワイももうちょっと工夫してみたいことがあるし」

「鉄かぶせるやつか」

「「「おお~」」」


志摩から追い出された九鬼氏は織田信長に臣従し息を吹き返した。

九鬼水軍として軍船を多数建造中だ。

航海術の伝授といい、渡りに船のタイミングだった。

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