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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
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閑話1 堺会合衆

織田信長に屈服する前の堺は、戦乱から町を守るため周囲に堀を巡らせ、会合衆(かいごうしゅう)と呼ばれる十数人の商人たちが自治的な運営を行っていた。

鉄砲生産も盛んに行われ、また、茶の湯などが特記される。

今井宗久(納屋)と津田宗及(天王寺屋)は茶人としても知られ、田中宗易(魚屋(ととや)、後の千利休)とともに後には天下三宗匠と称された茶人だ。


「んんん、にゃ」

「貴丸はんは、動じまへんな。

名だたる武将はんでも緊張するようやで」

「うんにゃ、ドキドキや」

「納屋はん、こんこは?」

「安倍貴丸殿や」

「あほ親が逃げよったんやで、茶しばくだけやのに」

「しばくとはまた・・・」

「下品やな」

「え、言わんの?鶏はしばきよるで」

「「う!」」

「ハハハ」


「どういう趣向なんや、えろうおかしいわ」

「まあ、まあ、これはどうや」

「・・・ギヤマンやないか、そやけど・・・」

「何処で手に入れたんや」

「これにな、煎茶を入れるんや」

「ん、ん」

「淡い緑が綺麗やろ、冷えとるで」

「「ん、うまい・・・さわやかやな」」


(流石茶人やん、まいう~)


「お茶の水出しというのを教えてもろたんや・・・なあ、貴丸はん」

「こんなん邪道や、そやけど旨いやろ、なはは」

「「・・・ん、これは?」」

「水羊羹いうんやて、戻し寒天で練り羊羹を包んだ饅頭やて」

「ほんのり甘くて、冷えてるのも良いの~」

「ん、ま、ええやろ、うむ」

「夏に茶しばくならこうやろ」

「「・・・」」

「これはこれでええけど、まあ、抹茶を練りまひょか・・・」


今井宗久が茶碗に抹茶と湯を入れて茶筅でかき混ぜた。


「織田様もなかなか厳しいですな」

「納屋はんはつっこみすぎやないですか?」

「なにを言うんや、この堺は織田様の支配下にあるやないか」

「そやけどなあ」

「ん!この茶碗は!」

「高麗やないか?」

「素朴やろ、こんなんありがたがる気が知れんわ」

「「へ?」」

「割れんように重ねて縄でしばるんやけど割れるんや、クソも味噌も一緒やで」

「・・・交易で?」

「そや、雑器やし塵も積もればってやつに、納屋はんは値付けがおかしいわ」

「「う~む」」

「そういうこっちゃ、ギヤマンもようけあるで」


なんのことはない、営業につきあわされた。

今井宗久はさりげなく塩硝の話もしていた。

会合衆の全てが織田信長に屈服してるわけでは無く、それぞれが、密かに敵対勢力と繋がっている。

勝ち組を逃さないように、織田家には塩硝が大量に入っていることを他の者達にも知らせておくと目で語り合っていた。


(なんやろ、見つめ合って、気色悪いおっさんどもやったな)


「ごくろうはんでしたな」

「そんなことないけんど、ふう~、あれでよかったんか?」

「バッチグーですわ」

「はう!」

「あんさん、アイヌ語が時々でよるさかいな」

「へ、へへへ、そやね」


(やってたらしいわ、はう~)


「ととやはん、仰山買いよったやろ、あれ、9割がた潰すで」

「へ?」

「良い奴だけ残して高く売る、それも商売やな」

「ふえ~」

会合衆については、えごうしゅうと読む人も居ますが、当時はかいごうしゅうと言っていたようです。

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