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オイナカムイ伝  作者: 日川文月
13/100

第13話 メシテロ(1)

長いので分割します。

(どうしてこうなった)


「おホホホ、このシャボンはほんに優れものよ」

「うう~」


奇妙丸に手を引かれて行った先で、大勢の侍女にポイ。

お風呂で泡だらけになった。

髪もシャンプーされて櫛ですかされ整えられて結われて。

新しいふんどしに上物の着物を着せられて・・・。


「男ぶりがあがったやないか」

「奇妙様・・・」

「ほんまに数え8歳なんなん」

「そやけど、肉ばっか喰って大きくなっとるし~」

「儂らも肉食えば大きくなるか」

「知らんけど、和人が肉食わんのはおかしいで、自然の摂理に反しとる」

「なんやそれ」

「千年万年と命を継いできたヒトは何でも食べられるようになっとる。

昔の誰かが肉喰うな言うのはおかしいで。

それが真理ならわいらアイヌはとっくに死に絶えとるやないか」

「う、そうじゃな」


(ここは定番の唐揚げかな、うしし)


「二本足の鶏は食べてもいいのやろ、ワイが料理してやろか」

「できるんか?」

「あたりまえや、水鳥を狩って血抜きして羽むしって喰ってるわ」

「であるか、だれかある」

「は!」

「鶏を料理する、賄いどころに案内せい」

「は!」


(うわ、みんな、青くなってバタバタだ)


「良いことを聞いたわね、ごちそうがあるの?」

「はい、貴丸が料理するそうや」

「うふふ、殿がご機嫌だったわ」

「はう?」


(濃姫かな、綺麗だな~)


「お方様、それは・・・」

「おたおたしないの、さ、こっちやよ」

「は、はい」


賄いどころの料理人達が唖然としていた。


「鶏は精助に言えばいいわよ、調味料は何を使うの?」

「油で揚げるんや、ごま油を鍋いっぱいに、醤油や小麦粉か片栗粉、ショウガやな」

「へい!」


(信長様は粗食だけど塩辛いものばかり食べてたらしいな、もしかして高血圧?

だからイライラと過激な言動だったのかなあ。

・・・まあ、料理人はやりがいがないだろうなあ。

メシテロラノベか・・・あ、この時代に白菜とか大根もあるんだ。

米は半搗きか、ネギもあるな、お、昆布もある)


鍋に湯を沸かして食料庫を物色してると鶏がやってきた。


「んなら、絞めますわ」

「そ、それは、儂のほうで」

「遠慮はいらんわ、そい!」


コココ、ギュエ~~


「うわ!」

「奇妙様、こんくらいで驚いてたら料理なんぞでけへんで」

「おホホホ」


血抜きしてお湯につけて羽をむしり、腹をかっさばいて内臓を出し、サクサクと腿胸肉を切り分ける。

ガラはいったん湯洗いして、昆布で出汁を取った鍋に移して強火で炊いた。


「捨てないので?」

「良い出汁が出るんだよ」

「へ?」

「内臓は洗って、竹串に刺しといて、炭火で焼くと旨いよ、肉も、長ネギも、あ、塩だれや醤油だれをつけてね」

「へえ」

「米は炊いておいて、ゆるめ?」

「殿様はその方がお好きですわ」

「普通に炊いて、雑炊にするから」

「へ、へい」


ショウガを擦って布で濾して醤油と酒を加えて作ったつけ汁に鶏肉を漬け込む。


「白菜と大根をこのぐらいに切って、長ネギは斜めにして」

「へえ」


ユズを搾って米酢と醤油でポン酢を作った。


「油の方は、このぐらいで・・・つけ込んだ鶏肉を片栗粉と小麦粉等量にまぶして揚げるんやで」


ジュワーと良い音と香りが広がった。


「あら、美味しそう」

「泡が立ってきたらあげどきや、全部揚げたら少し火を強くして・・・2度揚げするのがコツやよ」

「へい」

「こっちもええな、白くなったやろ、ちょい塩で味を調えて汁だけ別の鍋に移すんや、なんかこう囲炉裏みたいのはある?」

「ええと、火鉢はあるんやけど」

「そんでええわ、炭火を移して鍋をのせて、こりゃええな」

「・・・野菜は?肉も?」

「鍋を囲んで炊きながら食べるんやで」

「あら、面白い趣向ね」


「ええと、隣の板間でええか」

「そこには殿様とお方様は・・・」

「なんや、家族で食べへんの?」

「父上とお方様の座をしつらえれば良いな」

「何人になる?」

「8人か、子供は4人だ」

「そんならもう一羽しばくか、お、やっておるわ、優秀やな」

「アハハ」


言わなくても料理人達が教えられてたように動いていた。

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