第11話 茶話(1)
長いので分割しました。
「織田様はアイヌのことをどれだけ知っていなさる?」
「正直言うてなんも知らんな。
蝦夷と違うのんか?」
「アイヌは和言葉で人のことや。
和人のことをアイヌ言葉でシサムとかシャムと言う、隣人の意味や」
「我らとは違う種族かや」
「主上と呼ばれる方がおりますやろ。
アイヌはカムイの民で主上を奉戴する和人とは別や。
陸奥にもおったアイヌは侵略されて、ヤウンモシリに逃げたんや。
地図を見せたるわい、これや」
「ん!これは・・・」
「だいたいこんなんなっとる。
ミチが海賊に襲われて流れついたんが、カラプトモシリの南端にあるコタンや」
「そうそう、そこで助けてもらって船を修理してたら、長の娘となにがあれで、こいつができたんや、でへへ」
「「「「ぷ!」」」」
「まったく、アイヌの勢力圏はここらで、山丹人の勢力はこのへんや。
もっと端には別の勢力があるけど直の交易はしてへん。
山丹人は、ここらの昔は金という国だったマンジュ族とも交易をしとる。
明、朝鮮がここや、昔は元国だった蒙古族、韃靼族、契丹族、ここいらは極寒の地でもっといろいろな種族がおるらしいて」
「なにゆえお主は知っておる?」
「マンジュ族のホンジや明の商人だった王寧というものが部下におるんや。
ワイはそこまで話したことはないんやが」
「ミチは故郷のこと聞かんからやぞ。
2人の和言葉はそこそこやけど教養は高いで」
「ふうむ」
「少し別の話や、塩硝の産地はここや。
掘ればいいだけの岩やから高価ではない。
ワイらにとって只みたいな硫黄と交換しとるから安く仕入れてるんや。
明人はホタテの干し貝柱やナマコの乾物やらも欲しがる。
渡船の危険も少ないよって力を入れれば塩硝を大量に納めることはできまっせ」
「それは助かるのう」
「織田様、ワイらはアイヌを別の国として認めてもらいたい。
貿易でお互い利益が出るような関係が欲しいのや。
そやから織田様を応援する」
「奥州の安東や南部やらが黙ってないじゃろ」
「安東氏と子分の蠣崎氏が、ここに和人の先兵でおるんや」
「アイヌのあいだでも争いがあるんやけど、最終的には和睦して傷が広がらないようにしとるんや。
安東と蠣崎は武力で従えようとしてきた歴史があるんやわ」
「ん、それにしては安東の勢力がひろがっておらんな」
「アイヌが勝っておるんや、うちらの武器は弓矢やけど毒矢を使うからな」
「そ、そうか~」
「和睦で一緒に盃を交わして仲直りするのがアイヌの流儀なんやけど、蠣崎や安東は、酒に毒を入れたり伏兵を潜ませてだまし討ちしたり汚いことをしてきた。
そんなことは黙って蝦夷の反乱を討伐したって幕府や朝廷に報告してるやろ。
アイヌから幕府や朝廷に訴えることはせん、別の国やから」
「うう~む、記録を調べておきもうす」
「アイヌに記録はないのか?」
「文字がないんや、語り継ぎをしとるんやけど、ここ数十年のことやから長老はよう知っておるんやで」
「武士の風上にも置けんな」
「ワイらは武士やのうてカムイの民や、争い事は得意や無い。
・・・そや、和人は米が本位やろ?」
「あ、そういう意味なら石高制だな」
「北の島では寒すぎて米もできひん、農業はしてないんや」
「それなら何を食してる?」
「鹿やらの狩猟と鮭やらの魚介類と山菜、ちょっとの雑穀で暮らせていけるんや。
雑穀で酒は造るけどな」
「酒は別物か」
「「「「アハハハ」」」」




