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コアのお兄ちゃん


「お兄ちゃんは?どこいったのです?また私をおいて行ったのですか?」


 一年前にお兄ちゃんが、私をおいていってしまったというのはどうやっても変わることがない事実です。今まで私は、お兄ちゃんが私のことを嫌いになったから、一緒にいることが嫌になったから出ていってしまったのだと思っていました。


 でも、ニカさんは言いました。

 そんなことない、と。お兄ちゃんは私のことが大好きだ、と。そう言ってくれました。

 心が軽くなって、より一層お兄ちゃんを探すことを頑張りました。毎日街に出ては聞き込みをして、ときどき門の衛兵さんにお兄ちゃんが来なかったか聞いてみたり。

 簡単に見つかることはないとは知っていても大変なものでした。でも、諦めることはしませんでした。


 私は知りたかったから。どうして私をおいてお城を出ていってしまったのかを。みんな口を閉ざして教えてくれないから、私自身がお兄ちゃんから直接聞き出すのです。


 二日前にスカイさんに偶然出会いました。ニカさんに、ニカさんと話してからと言われていたので、スカイさんをニカさんの家まで連れていき、ニカさんと話が終わるのを待っていました。

 スカイさんは良い人で、お兄ちゃんみたいな人で、私をそのまんまの、等身大の私を見てくれる人。ニカさんは化物モンスターとか言うけれど、私にとってはそんな人なのです。


「わかってはいるのに……」


 私が自身のおかしなところに気づいたのは、スカイさんとお話ができることになって、ニカさんにスカイさんのもとに連れてきてもらったときです。


 目の前に現れたスカイさんが、お兄ちゃんのように感じたのです。大好きな、会いたかったお兄ちゃんに。

 そう感じてからは自分を抑えることなどできませんでした。

 やっと会えた、嬉しい、大好き、甘えたい、ぎゅうして……など、普段はスカイさんに感じないことが頭の中にたくさん出てきて、目の前の人がお兄ちゃんではなく、スカイさんだということなんか気にしないで脳の命令のままに私はスカイさんに抱きつきました。


 スカイさんは、最初こそ驚いていましたが、優しく頭をなでてくれました。とても気持ちが良くて、ずっとなでていてほしかったくらいです。

 ニカさんとスカイさんは何かを話し合って、私はニカさんに思い出すのが恥ずかしいですが、餌付けをされてスカイさんから離されました。そのすきにスカイさんは帰ってしまったようでした。


 スカイさんが帰ってしまっても、しばらくはそんな状態が続いたのですが次第にそれは落ち着いて、なんの支障もなく、普通の思考が戻ってきました。

 

 ……戻ってきたはずだったんですよ。


「お兄ちゃんに会いたい……会いたいです!」


 ニカさんにわがままなことを言って困らせてしまうのです。お兄ちゃんでも、スカイさんでも、どちらでもすぐに会えるわけではないと頭ではわかっています。考えていることと言動が一致しないのです。

 考えている私は年相応の理性のある私で、私の言動は幼いわがままな私なのです。わかっているのに、制御が効かない。


 制御が効かないときというのは、海が満潮と干潮のときがあるように波があるのです。

 困ったことに、外でお兄ちゃん探しのために聞き込みをしているときに波が来てしまうと、すぐに会おうと思えば会えるスカイさんのもとへ、走っていこうとしてしまいます。

 その時はいつも運が良くて、ニカさんの家まで道案内を頼む人や、その隣の家のバローナさんの家まで案内を頼む人がいて、案内が終わる頃にはいつもの私に戻っているのでした。

 

「うぅ……変ですよぉ……」


 変な状態になってしまってから、魔力の調子が悪いように感じます。魔力の通りが速かったり遅かったり。通らないこともありました。

 そのせいで、気持ちが悪くなったり、無性に楽しくなって笑ってしまったりと変な状態の波が来ているとき以外も油断ができません。

 本当に私はどうなってしまったのでしょう……。怖いんです。

 

 今日、ニカさんにこんなことを言われました。


「コア、今日何が起きても驚かないでね?」


 何かあるのでしょうか。こんな状態のときの私はサプライズなんかされたりしたらおかしくなってしまいそうです。私が驚くようなこと?何なのですかね……?

 お昼まではなんにもなく、平穏に過ごせました。こんな状態では、ちゃんとした聞き込みができないので、お兄ちゃん探しはお休みです。

 ニカさんの作る美味しいお昼ごはんを食べ終えると、スカイさんと私の()()()()エルフのおじいさんが私を訪ねてきました。

 ニカさんはスカイさんたちが来る事を知っていたようで、微笑んでなにも言いません。


「スカイさん、なにか御用ですか?」


 全く予想がつきません。


 スカイさんはにっこりと私に微笑みかけて、門の方で待っていた人を連れてきました。

 私はその人に見覚えがありました。いえ、見覚えがある程度ではありません。

 その人は……私の、私の……本当に、本物の私のお兄ちゃん。すっと探していた私のお兄ちゃんでした。

 なんと、スカイさんたちで探してきてくれたというのです!


「お、お兄ちゃぁん……!会いたかったの!ずっと……ずっと!」


 お兄ちゃんまで、全力で走っていってお兄ちゃんが幻なんかではないことを確かめるようにそっとお兄ちゃんの手を握ります。お兄ちゃんのことはちゃんと触れました。幻ではない本当にのお兄ちゃんなのでした。


「お兄ちゃん、おかえりでいいんだよね?」

「……あぁ。ただいま、コア。ごめんな、何も言わずに」

「そんなのもういいの。また会えた、ただいまって言ってくれた。それだけでいいの。お兄ちゃん、お話しよ。いいでしょ?」

「そうだな、しっかりと話さないとだよな……」


 私はお兄ちゃんを私が使っている部屋へとひっぱって行くのでした。


 お兄ちゃんとまた会えて……本当に嬉しいです。

 スカイさんたちにお礼を言わないといけません。全く、スカイさんには助けられっぱなしです。



お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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