ツェンタ家にて
もう、十一月ですよ。中旬ですよ。季節ってはやくないですか?こないだまで、夏でしたよね?
「早速だけど、あなたは何者なのかしら?」
「何者って言われても……」
いきなり突っ込んだことを聞くな、ニカさんは……。
正直に全てを話すつもりはないんだが、なにも話さないのもニカさんの不安が残ることになるかな。
「だって、あなたの魔力は化物級。只者ではないわ」
「いや、それはだな……」
あー……どこまで話すかな。ニカさんにはリーデル家とフェーラーとアッシュさんの……アッシュさんから話したのか?まぁ、そこらへんまでか。
それ以上だと、変な詮索をされかねない。
「ニカさん、オレを何者だと思う?」
まず、ニカさんがどこまで予想できるかだな。最初から教えてしまっては余計なことまで教えてしまったり、勘違いで済ませられるところを真実を教えてしまったりな。
オレにそんなことを言われたニカさんは予想外のことに驚いた顔をしていたが、少しの間考えて答えを出してくれた。
「私はスカイくん、あなたのことを人間だとは考えているの。獣人の特徴も有していないみたいだし。常識外のね」
「そう見えるのか……」
確かにそうだよな。実のところ自分で自分を把握しきれていないけど、普通じゃないのはわかっている。
人間のくせに何百年と生きているし、リーデル家には……あの家には知られていない後ろめたいものがあるし。
何百年と生きているせいで、使える魔法ももともと持っている能力に加えて限界突破してそうだろうし。
「えぇ、そうみえるわ。私の耳に入ってきた噂によると、五百歳超えているんだって?本当?」
その情報はあのクラスでしか言っていない情報のはずなんだが、どこから仕入れた?ニカさんの情報網はすごいな……。
「まぁな。五百超えてるけど……その情報どこで?」
「おじいちゃんね!」
立ち上がって水を得た魚のように生き生きとしだした。別に、さっきまでが萎れていたなんてわけじゃないんだが……なんていうのかな、ニカさん目が光ったように見えたんだよな。肌の艶も比べると、つやつやしているし。
「おじいちゃんって……」
「だってそうでしょ?」
バローナ先生にも言われたけど、おじいちゃんちゃんてさ……、子どもに見られるのより嫌なんだけど。まだ、子どもに見られたろうが納得できる。うん、きっとそう。見た目より年上に見られるのが嫌なわけじゃないはず。
「はぁ……話がそれたな、戻そう」
「ごめんなさいね、つい……」
「あぁ、他には?」
「他は、わからないわ。でも、教えて」
真剣な顔をしてニカさんはそう言った。
なんだろうか?
「コアについてはどう思っているの?それが、一番知りたかったことなの」
なるほど。本命はそっちだったか。
当たり前の話で、ニカさんは今どういう状態なのかは知らないが、コアは使えている国の姫なのだから、一緒にいる人間のことは気になるだろう。それが、自分が化物級の力を持っていると判断した人間ならなおさらだ。
コアは不思議な存在だ。一緒にいると、ふわふわした気持ちになる。それが何なのか、オレは知らない。
コアさえ良ければ友人として付き合い続けてみたいと思っている。それが何なのか知りたいから。
「心配になるやつ。これからも、友人みたいな関係を続けたいと思っている。不思議なやつだからな、コアは」
「そう、これからもコアのこと、お願いできるかしら?ときにはスカイくんの助けが必要となるだろうから」
ふーん……。
何か引っかかる言い方だが、気にしないでおこう。
「いいだろう。ニカさん、フェーラーについてどこまで知っている?」
「トーリ?あいつはコアのことを陰ながら毎日見ているわよ?」
あの手紙道理の話だな。
「というか、トーリのことを知っていたのね。コアはなんにもトーリについていなかったわね……なんでかしら?」
あいつの手紙によるとコアからは自分の記憶を消したんだっけ?いや、そんなこと書いてたっけな……。
どっちにしろ、コアからフェーラーの記憶はないんだよな。なんかしたとしか思えない。
「スカイくんはわかる?」
「まぁ、わかるが……。言いたくないんだが」
フェーラーにはそんないい印象がない。
オレが何かを思い出して、頭痛で苦しんでいるときに何もしてくれなかったから。
ただ、コアのことを大切に思っていることだけはいい印象であった。
「そう?ならいいんだけど……トーリに聞き出すわ」
「そうしてくれ」
フェーラーがニカさんに簡単に言うとは思えないけど、言ったらそれは伝えていいことだったというだけだ。
オレがいいたくないだけだから。
「あ、コア呼ぶ?」
「いきなりだな……」
「そーう?」
「スカイさん!やっとお話がゆっくりできますね!」
ニカさんに連れられてコアが部屋に入ってきた。
嬉しそうに頬をうっすらと紅潮させて、ニカさんが抑えるのも聞かずにオレに飛び込んできた。
飛び込んで来るなんて予想していなかったから、ついよろめいてしまった。それほど勢いのあるものだった。
「うふふ、お兄ちゃんの匂いがしますー」
オレの洋服に顔をこすりつけて幸せそうに微笑むコアは、年齢より随分と幼く見えた。その姿は、幼い子が大好きな人に愛嬌を振りまいているようだった。
お兄ちゃんって、オレ違うんだけどな……。困ったな。
「コ、コア?!どうしちゃったの!」
ニカさんが叫ぶ。
そんなのはお構いなしに、コアはオレに抱きつき続ける。普段のコアはこんなことをする子なのか?
一緒に過ごした一ヶ月では、そんな素振りも見せなかったのに。甘えたくなってしまったか?
お城を飛び出して、オレと行動して、ニカさんの元へ行って、兄を探して、気を張り続けでもしたのだろう。
「お兄ちゃん、大好きですー」
「コア?オレ、スカイなんだけど……コアのお兄ちゃんじゃないよ?」
そう言ってみたものの、コアが抱きつくのをやめる気配がない。逆に抱きつく力が強くなっている気がするくらいだ。
「スカイくん、ごめんなさいね……なんか……コア、どうしちゃったのかしら?」
困り果てた顔で申し訳なさそうに謝ってくるニカさんは、こんな状態になったコアを見たことがないみたいだった。表には出していないものの、ニカさんも混乱しているようだったから。
しかし、どうしたものか。簡単に魔法を使ってこの状態を治すというのもあることにはあるが、再発するかもだからな。
「いや、大丈夫だ。こういうときは、こうすれば多少はおさまるものだ」
そう言ってオレはコアの頭をなでてやる。すると、コアは落ち着いたようで、ソファにおとなしく座っている。
「スカイくん、今日はありがとう。コアはなんとかしてみせるわ……私の腕にかけて。だから今日は……」
「こちらこそ。また機会があれば、オレはニカさんともっと話してみたいしな」
ニカさんに挨拶をして、ニカさんの家をでて帰路につく。
ニカさんがどうにかできなかったら、オレも何か解決方法を考えてみないとな。いまはニカさんに任せるとしよう。
「くしゅんっ!」
大きなくしゃみが響く。
「噂でもされてるのかなー、そんなことより任務しねーと……」
次回もよろしくお願いします。




