ある日の一行―シルフィア王国―
「ああ!見つからない」
機嫌が悪いことがすぐわかってしまうくらいの表情と声色をして中級の雷属性の魔法を誰もいない草原に向かって何発か乱暴に撃ち放つ。
「ちょっと、何してんの……!地形変わっちゃうでしょ!」
「うわー……中級を軽々と……」
そんなフードを目深に被ったローブ姿の少年に少年よりか少し年上だろうと思われる少女と少年が呆れたような言葉を言う。
ローブ姿の少年と少女と少年は主従関係であるはずなのだが砕けた口調で友人のようである。
最近はシルフィア王国の首都フィーリアンを拠点に人探しをしている三人だったが、なかなかこれといった情報が得られないことにアインスこと兄を探しつづけている重度のブラコンと言っても過言ではない弟、クラウド·リーデルはしびれを切らしてしまった。
「魔法開発しようかな、ちまちま探すの面倒くさい」
クラウド·リーデルは兄が消えてしまってから数百年、ずっと兄の帰りを屋敷で待っていた。
父親が死んでも、母親が死んでも、リーデル家の屋敷が新しい場所になっても、子供が死んでも、その孫が死んでも、ずっと兄と過ごした屋敷で帰りを待ち続けた。
ブラコンをこじらせているため、兄が死んでしまってもうこの世には存在しないなんて考えは持たずにいつでも兄が帰ってこられるようにしていたのだ。
現在は探しに出ているということで、屋敷の方には書き置きをしてある。『帰ってきたのなら、この水晶を壊して待っていてください』と壊すことでついになっている水晶にわかるように一つ水晶を一緒において。
「あのねぇ……新しい魔法理論を構築するのにどれくらいかかると思っているの?」
先程から仕えている主に呆れることしかしていない少女はため息をつく。
「ざっと……一日?」
ちなみに通常は年単位でかかる。一日で創り終わる人間なんかこの世の中にいるのか。
「はい?」
「だって、ボクは何百年と生きているんだよ?大体のパターンの魔法理論は知りつくしている」
「そうね、そうだったわね」
呆れても呆れたりない。
兄もそうであったが、魔法に関しては弱点がなかった。あえてあげるとすれば、すべての属性は使えないということだろうか。ただ、使えないだけでそれらの知識に関してはその属性が使えるものより詳しかった。
大量の知識を有するため、新しい魔法理論を生み出すことを息をするようにしていた。
人々の役に立つものからいたずらでしか使えないようなものまで様々なものを数え切れないほど創っていたことを少女はおぼえている。
少年も頷いて昔のことを思い出す。
何回クラウドにいたずらをされたことか、そして、何回クラウドの魔法に助けられたことか。
「じゃあ、宿に戻ることにする?」
「そうしよう、ボクはこもることにしよう」
魔法のせいで地形がほんの少し変わったことは自分たち以外誰も見ていなかったようなのでそのまんま宿に戻ることにした。
数日後、地形が変わっているのを見つかりちょっとした騒ぎになるのだがそんなことは彼らの知ったことではない。
「うーん……これ以上は広がらないか……」
早速、宿にこもって新しい魔法理論を創り始めたクラウドだったが、望みどうりの魔法を創り出すのに苦労していた。
自分が指定した人物の魔力の波長を察知してその人物がどこにいるかを脳にイメージで示すという魔法がクラウドの創り出したいものだ。それ自体は別段難しいことではなかった。だが、察知できる範囲が問題だったのである。
今のところ、術者を中心に半径百メートルが限界だった。半径百メートルというのは小さな村一つ分の面積となる範囲である。これで探すとなると効率は良くなるが、結局いろんな場所をちまちまと移動しなければならない。
クラウドの望む察知範囲は世界中だった。つまり、一回使えば位置がわかるということになる。
「そう、距離指定が既存のだと難しい。半径百メートルが最高なんだもの、うーん……」
ここで妥協するのも一つの手としてあることにはあるが、そうはしたくない。妥協してしまえばここでお終いなのだか、一度完成した魔法理論というのは改良をする際に一から魔法理論を構築し直さなければならない。クラウドの望むものにするのなら、ここまで細かく構築した魔法理論を改良するために再構築するのは二度手間にならないだろうか?
ゴール地点はどの道を通ろうと一緒なのだから。
「もう少し、こう、なんていうのかな……もっと、うん……」
いくら唸ったところですぐに解決できるものは頭に浮かばない。クラウドは一旦休憩を取って頭を冷やすことにした。
部屋から出て一階にある食堂に入るとちょうど宿屋の店主と出くわした。
「アインスさん、だいぶお疲れのようですね」
「なんか、疲れていても食べられるものってある?」
「はい、ありますよ。甘いアプルやさっぱりとしたルーフなどの果物はいかがでしょう?」
「んじゃ、それを」
食堂の席について大きく伸びをしたあと、クラウドは眠そうにあくびをした。
ほぼ一日中休み無しでこもっていたからだろう。目の下にはうっすらくまができている。
「お待たせしました」
店主が果物を切って持ってきたときにはクラウドは静かに寝息を立てて寝てしまっていた。
クラウドはぐっすりで店主が軽く揺すっても目を覚ますことはなかった。
寝冷えしてはいけないと、店主は毛布を一枚店の奥から持ってくると、クラウドにそっとかけたのだった。
「ん……」
数時間が経って、目を覚ましたクラウドはかけられた毛布に気づいて微笑むのだった。
ハロウィン終わったなと思いきやもうクリスマスです。はやいですよね……。




