アーバン家にて―2―
「ならば、スカイ•リーデルというものはいるか?」
スカイ君がどうかしたのか?
僕はなぜ父さんがこんなことを聞くのかはわからないけど、隠す必要なんてないもんな。
「はい、同じクラスです」
しかし父さんが話題というか、こういうわざわざ呼び出してまでする話にスカイ君を挙げるなんて彼は何か特別なことがあるのか?
たしかに、少し彼に違和感を感じはしたけれど、父さんがどうこうするような人じゃないと思うんだけどなぁ……。
父さんだから意味なく聞くことなんてないんだけどさ。
「彼はどんな人物だ?」
そんなこと聞かれても、スカイ君とは試験のときに初めてあって、今日初めて話したから彼について知っていることなんてほとんどない。
それでもいいものか。
僕がどうやって答えようか悩んでいる間にエスデスが先に答えだした。
「スカイさんはですね……たぶんあれですよ。すごい人です」
……いきなり抽象的なことをいうか。まったく……。
「だってですね、スカイさんは試験のときに……あ、試験は幻魔法からの脱出と、武力検査だったんですけれど……幻魔法のときにエスデスと兄さんは二人とも十番くらいだったんですけどね」
いきなりジャングルのような場所に試験会場がなってしまって、それが幻魔法だと気づくのに時間を要してしまった。
そして、僕は幻から出るのに"脱出"を使った。今はそれしかそういう場所から出ることができる魔法がないんだよね。
昔はとても便利で、どんな魔法にも対抗することができる"消去"なんていう魔法があったようだけど、その魔法はもう魔法を構成している『魔法理論』が失われてしまって、今は誰も"消去"を使える人がいないという。
「そして、次の武力検査のときは、相手の方の強さは試験としてちょうどよく、エスデスも兄さんも倒すまでに時間がかかりました。ですが、スカイさんは一発で倒してしまいました」
エスデスの言うとおり、相手役の人は強すぎず弱すぎずのいい強さの人だった。
多分、最低でもあれくらいの強さがないとやっていけないということだろう。
それなら、僕もエスデスもまだまだといったところだろう。
「あとは……うーん……。エスデスからは以上です」
エスデスからのスカイ君についての話は終わった。
次は僕だ。ほとんどはエスデスが話してしまったけれど、まだ話していないことがあるからね。
「次はボクからですが、エスデスが言ったことは僕も同じように感じました。そして僕がスカイ君に感じたのは――」
僕は父さんの目をじっと見ながら話しだす。
「スカイ君は……もしかしたらですが、あれは本当の姿ではないかもしれません」
スカイ君と握手したときに強く感じた違和感。
父さんは僕の話に興味を持ったようで、話を聞いている表情が真剣そのものになっている。
「僕はスカイ君とあることがあって仲良くなったのですが、そのときに彼に対して強い違和感を感じました。うまく言葉には表すことができないんですが……」
僕があのとき感じた感覚は本当に少しの微妙な違和感で、それが大きな違和感ではないけれど、その本当に少しの微妙な違和感をとても強く感じた。
自分の中でも確証の得られるものではなかったけれど。
「彼の見た目は、成人するかしないかの少年ですが、それは本当の姿ではないと思います。そして、彼自身も本来の彼ではない、そんな気がしました」
「ほぅ……」
「僕からは以上です」
他にはエスデスのスカイ君に対しての失言問題とかがあるけれど、兄としてはもう済んだことで、スカイ君も許してくれたから言わなくてもいいんじゃないかと思う。
どうやってスカイ君と仲良くなったのか、と聞かれない限りは言うつもりはない。
父さんは僕とエスデスの話を聞いて、しばらくの間、無言で考えをめぐらせていた。
少しして、スカイ君についての情報を僕達に伝えた。
「スカイ•リーデルというものは……お前たちも知っているだろう、歴史的に有名なリーデル家。そこの人間だ」
「スカイさんって、本当にすごい人だったんですねぇ」
今、父さんにリーデル家と言われるまで気にしてはいなかったが、スカイ君があのリーデル家の人だとは。
「そして、容易に信じることはできないのだが、彼は、リーデル家の十五代目当主なのだ」
はい……?スカイ君が?リーデル家の十五代目当主?何を言っているんだ?
だって……今リーデル家は二十五代目だから、一代五十年当主を務めたとして計算すると、五百年前だよ?
それってありえる?
エスデスも僕と同じく計算したようで、驚愕の表情を浮かべている。
それから、父さんは僕とエスデスにある指令を出した。
それは別に難しいことではなかった。
「スカイ•リーデルと一緒に行動して、彼のことをできるだけ細かく調べてもらいたい。いいな?」
「はいです!」
「はい……」
僕とエスデスが受けたこの司令が後々、スカイ君が求めていることを見つけるカギになろうとは……このときは全く思っていなかったんだ。




