アーバン家にて―1―
ウィルのスカイの呼び方を呼び捨てから君付けに変更しました。
「ウィルか、よろしく。オレはスカイ・リーデルだ」
「よろしく頼むよ、スカイ君」
エスデスが迷惑をかけてしまった彼と僕でお互いに名乗りあった。
彼、スカイ・リーデルという人について僕はまだよく知らないから、言い切ることはできないんだけど……今の彼は本当の彼じゃない。本当の彼はもっと別の顔を持っているんじゃないか。そんな気がする。
彼が本当は性格が悪いとかそういうものじゃないんだけど、何か本来のあるべきスカイ・リーデルという人から欠けてしまっているような気がするんだ。
「兄さん、なんて長い説教なんですかー?私、くたくたですよ」
エスデスがやっと開放されたとのびをしている。
僕は先程まで小一時間ほどエスデスに説教をしていたけれど、これまでに何回同じようなことで説教をした?
前は一週間、その前は三週間前、もう一つ前は先月……。
あれ?多くないか?多いよね、これは。
エスデスって学問に対する学習能力というものはあるんだけど、モラルについての学習能力はゼロに等しい。そのせいでいつも失礼な言葉ばかり他人に言う。
僕に無神経なことを言うのはもう慣れてしまったから、公の場で言わない限り我慢してなんにも言わないでおこうかな……。いちいち説教するのもこちらがつかれるというものだから。
「兄さん、お父さんが私たちを呼んでいますってー!」
説教が終わったということで、先に部屋に戻ったはずのエスデスが小走りで戻ってきた。部屋に戻るんじゃなかったのか?
ま、父さんに呼ばれているんだもんな。父さんに呼ばれて行かないなんておかしな話だからね。
それにしても、エスデスはのんびりしているな。いくら屋敷の中とはいえ、父さんに呼ばれているのにこんなにゆっくり伝えに来るとか。
急ぎなら魔法を使えばいいものの……。
そんなことはいいとして、エスデスは基本的にのんびりマイペースでいつも間延びした語尾でぼんやりとしていることが多くて……それでいて無神経なことを言う。
けれど、エスデスは武器を握ると人が変わるんだ。
それがよくわかるのが、双剣という武器を握ったときで、握った途端好戦的な性格になって両手に持った双剣を巧みに振るう。
そうなったエスデスには僕なんかじゃ勝つことができなくて、父さんでも負けることがあるんだ。
それより、父さんは僕とエスデスになんのようだろうか。
屋敷の一番奥にある部屋が父さんの部屋である。その父さんの部屋で僕とエスデスは自分たちの名前を述べた。
父さんの部屋に入るときはいつ何時誰であってもそうするという決まりなのだ。
「ウィルです」
「エスデスですー」
そうやって名乗ると部屋の中から木製の重い扉が開いて、使用人が「どうぞ」と言って中に入れてくれる。
部屋の奥の窓側に一つ大きな机があり、そこに父さんが座っていて、僕とエスデスを待っていた。
僕とエスデスが父さんの目の前に来ると、父さんは口を開いた。
「ウィル、エスデス……お前たちはノーベラ学園に入ったな?」
確認を取るように言ったから、これからの話に必要になってくる情報何だろうけど……わざわざ確認する必要があるのか?
ノーベラ学園に入ることは父さんが決めたことで、僕とエスデスも文句はなかったから、相互の同意だったはずだけど。
それとも、試験では入れたかっていうことか?それなら納得できなくはないけれど、父さんが聞くのはどこか不自然だな。
聞いた理由を知りたいけれど、父さんが質問しているときに聞き返すのは、部屋に入るときに自分の名前を述べることのように決められていることであって、聞き返すことができない。
「はい」
「もちろんですよー」




