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魔王を倒した翌日、勇者の俺が世界から指名手配された ~裏切った王国を追われたので、魔王の娘と戦争を終わらせます~  作者: レモンティー


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第三十八話 最後の国境戦

白狼砦の南門が開いたとき、俺たちはすでに避難路を確保していた。

砦の地下には、ユアンと同じように連れてこられた子供がいる。

敵を倒す前に、彼らを出さなければならない。

「地下水路は二本あります」とスーシャ。

「一本は崩れています。もう一本は、砦の北側へ通じています」

リリスが地図に印をつけた。

「私とグレンが子供たちを救出します。ユリウスとゾイドは正面の兵を止めてください」

「危険だぞ」

「分かっています。でも、今回は役割を分けましょう」

俺は頷いた。

夜明け、反乱軍が砦の門から出てきた。

数は四千。

王国軍の旗を掲げていたが、兵士の表情は暗かった。

ローデンが先頭で叫ぶ。

「諸君! 勇者と魔王の娘が王国を奪おうとしている! ここで止めなければ、家族は魔族に支配される!」

ゾイドが馬を進めた。

「ローデン! その言葉を証明できるか!」

「お前は魔族に寝返った!」

「私は停戦協定を守っている。お前が焼いた倉庫の記録も、ここにある!」

ゾイドは封蝋のついた書類を掲げた。

ローデンは答えず、進軍を命じた。

兵士たちが動き出す。

俺は聖剣を抜いた。

「止まれ!」

声が谷に響いた。

先頭の兵士が槍を構える。

俺は地面へ剣を突き立てた。

地脈術が走り、地面に浅い溝が生まれた。

人が落ちない深さ。

馬が越えられない幅。

「ここから先へ進めば、戦闘になる。武器を置けば、誰も追わない!」

兵士たちは足を止めた。

ローデンが怒鳴る。

「臆するな! 勇者は魔力を使い果たしている!」

それは半分、正しかった。

右腕に痛みが走り、視界が揺れる。

だが、俺の後ろにはゾイドの兵がいた。

魔族の兵もいた。

皆が武器を下げ、白い停戦旗を掲げている。

「戦いたくない者は、こちらへ来い!」

ゾイドの声に、一人の兵士が槍を置いた。

次に二人。

ローデンは顔を赤くした。

「裏切り者を射殺しろ!」

だが弓兵は動かなかった。

その瞬間、砦の北側から爆発音がした。

地下水路の入口が崩れたのだ。

俺は振り返った。

「リリス!」

返事はない。

ローデンが笑った。

「魔王の娘を助けに行くか? その間に王都へ進軍するぞ!」

俺は動かなかった。

ここを離れれば、谷の兵士たちが衝突する。

リリスを信じるしかない。

地下水路では、グレンが崩れた石を持ち上げていた。

リリスは子供たちを一人ずつ外へ送り出す。

「走らないで。前の子の肩を見て」

最後の少年が出たとき、天井がさらに崩れた。

グレンが身を挺して支えた。

「姫様、先に!」

「あなたを置いていけません!」

「俺は大丈夫だ!」

リリスは首を振った。

彼女は地面に手を当て、魔力を流した。

崩れた石がわずかに浮く。

その隙にグレンが抜け出した。

二人は泥だらけで地上へ転がり出た。

砦の北側に、子供たちの姿が見えた。

「救出成功!」

伝令の声が谷に響く。

俺はようやく息を吐いた。

ローデンは剣を抜き、俺へ突進してきた。

「お前さえいなければ!」

俺はその剣を受け止めた。

「俺がいなければ、別の誰かを敵にするだけだ」

「平和など幻想だ!」

「そうかもしれない。だから毎日守るんだ」

俺は剣を弾き、ローデンの手から武器を落とした。

ゾイドが駆け寄り、彼を拘束した。

ヴェルナー商会の会頭は逃走を図ったが、地下水路の出口でグレンに捕まった。

戦闘は終わった。

死者はゼロではなかった。

最初の衝突で二人の兵士が命を落とし、負傷者も出た。

俺は二人の名を記録した。

勝ったからといって、失われた命が戻るわけではない。

夕方、反乱軍の兵士たちは武器を並べた。

その横で、子供たちが温かいスープを飲んでいる。

リリスは疲れた顔で座り込み、俺に言った。

「終わりましたね」

「戦いはな」

「それで十分です。今日は」

俺は頷いた。

明日からは、罪を裁き、食料を運び、仕事を作らなければならない。

だが今夜だけは、子供たちが眠れることを喜びたかった。

戦いが終わったあと、ゾイドは捕虜の扱いを巡って部下と議論した。

「ローデンの命令に従った兵士は、全員拘束すべきです」

副官の意見に、ゾイドは首を振った。

「武器を置いた者まで同じ罪にすれば、次に降伏する者がいなくなる」

「しかし、村を脅した者もいます」

「だから調べる。誰が何をしたのか、一人ずつだ」

俺はその会話を聞いていた。

撤退する兵士を追い詰めれば、戦いは長引く。

ゾイドは武器を置いた者の退路を確保し、グレンはその道を味方が塞がないよう見張った。

戦場では、敵の旗を見れば剣を向けた。

今は同じ旗の下に、村を焼こうとした者と、子供を逃がした者がいる。

旗だけでは何も分からない。

夕方、リリスが子供たちの人数を確認していた。

「九人全員います。ユアンが覚えていた六人と、名簿にしかなかった三人です」

俺は胸をなで下ろした。

「怪我は?」

「擦り傷と栄養不足が多いです。医者に引き継ぎました」

一人の少女が、グレンの外套を引っ張った。

「角のおじちゃん、怖かった?」

「俺がか?」

「石が落ちてきたとき」

グレンは少し考えた。

「怖かった」

少女は驚いた顔をした。

「強いのに?」

「強いから怖くないわけじゃない」

少女は頷いた。

「じゃあ、私も怖くていいんだ」

「もちろんだ」

グレンはぎこちなく頭を撫でた。

夜、俺たちは死者二人の遺族へ送る手紙を書いた。

名前、所属、亡くなった場所。

それから、最後に何をしていたか。

一人は仲間をかばい、もう一人は矢を止めようとしていた。

「英雄として書くか」と書記が尋ねた。

「事実だけでいい」と俺は答えた。

「家族が知りたいのは、飾った言葉じゃない」

書記は静かに頷いた。

勝利を祝う声は、どこからも聞こえなかった。

だが、翌朝には橋を渡る荷車の音が戻ってきた。

それが今の俺たちにとって、何より大切だった。

戦場の片づけが終わるころ、ゾイドが俺の右腕を見た。

「また無理をしたな」

「溝を作っただけだ」

「その『だけ』で、顔色が悪い」

スーシャが包帯を巻き直した。

「次は倒れますよ」

「次がないようにしたい」

「そのためにも、休んでください」

俺は反論できなかった。

少し離れた場所では、王国兵と魔族兵が壊れた柵を直していた。

「この板は使える」

「釘が足りない」

「うちの荷車にあるぞ」

互いの言葉が飛び交う。

戦いのあいだ、俺がすべてを決めたわけではない。

リリスが子供を逃がし、グレンが水路を支え、ゾイドが兵を止めた。

俺が倒れても、誰かが続きを担える。

そのことが、少しだけ嬉しかった。

リリスは俺の包帯を見て眉をひそめた。

「次は私たちを信じて、もっと早く助けを呼んでください」

「分かった」と俺は答えた。

彼女は少し疑わしそうだったが、それ以上責めなかった。

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