45話
お久しぶりです。
(戦争イベント--がもし起きるのなら、それに備えなければならないんじゃない?)
乙女ゲーと銘打っていたが、ほぼ育成シュミレーションのこの『異世界ダイアリー』、戦国時代のように、なんと領地間の戦があったのだ。
(パターンが確かふたつあったはず…)
私は自室の姫テイストの白いベッドに横になりゴロゴロしていた。
そして、前世のゲーム内容を思い出していた。
『異世界ダイアリー』は外国からの武力は竜が。領地間の争いは精霊契約で避けるシステムになっていた。
(外国との戦争イベントは王太子攻略時にしか起きないはず。もう、これは私がどうこう出来る問題じゃないから放置。領地間の戦争イベント…。これは精霊契約していれば、結果だけ申告されたよね)
精霊契約している土地に武力行使しても地の利がないどころか、先日のニンジャの撃退同様、進軍した兵士がただ死ぬだけという無様をさらす事になる。
なので、これは領地内の精霊契約の数で勝利できるイベントだった。だが、同数だった場合起きる「決闘」…!
これは正直考えていなかったぞ。
領地間の争いの解決法、少人数のメンバー同士での「決闘」。
王家が認定した決闘になるので、この勝敗は絶対だった。
(ゲームじゃ領主本人と育てたメンバーとで合計五人参加だったけど、これって現実でもそうなのかな? これもゲームではチート軍団のエメラルディン王子とその仲間で乗り切れたな。…実際、ゲームと現実は違う。エメラルディン王子…スマラルダスやスピネル君に参加頼めないでしょ。私より国家的に大事な身分だもん。アンバー先生で無双出来そうな気もするけど…。あと、シルバート借りればダイジョブかも。それなら今の戦力なら足を引っ張るのは私だな~)
決闘は命を取るのは禁止だったはず。でも、その勝敗は絶対というのがミソだ。
(…もし大変な要求されても、断れないんだよ…!)
事前に要求内容を取り決めして行うけれど、その交渉で失敗して言質とられるヘマしたらと思うと、あ、胃がキリキリいいそう。
その後片付けでどれだけお金かかるか…。
このゲ-ムが貢がせゲーと揶揄される所以だった。
(いや! ほんと! 領地経営はお金かかるの! 心の叫び!)
思わずクワっと目が覚めたわ。
あ~、やること増えた。
ぐぐぐ、とその夜、私は必死になって、ゲーム情報を思い出した。
***
「…私、お茶会に行きたくない」
私は自分の執務室で机に突っ伏していた。
「あれだけ乗り気だったのにどうしました?」
最近秘書のように働き始めたスピネル君が書類を纏めながら問いかける。
書類仕事も出来るとは完璧かよ。
「セルカドニー侯爵がもし金策に困っているなら、このフロウライト伯爵領の鉱山開発に一枚噛みたいと考えてるでしょう? だから、きっと、子爵に成り立ての私に声をかけたと思うの。子供の私からフロウライト伯爵に口添えさせたいのだわ。あるいはソーダライトのお祖父様に」
「それは考えられますね」
スピネル君が考えるように口元に指を添える。
「…でも、私は実際にはフロウライト伯爵にはまったくえいきょうりょくのない人間なのだもの。ムチャぶりだよ。そうしたら、今度はセルカドニー侯爵はこのエレスチャレ一帯に目をつけるかも。…ここは、魔鉱石の鉱脈があるかもしれないし」
これを知られたらエライことになると夕べ不安に駆られたのだ。
戦争イベントの可能性も考え付いたからなんだけど。
「なので、提案があります」
「…聞きましょう」
「第二、第三の精霊契約をしたいと考えています」
私はゆるゆると顔をあげた。
スピネル君が目を丸くしている。
「どこに精霊がいるかわかるんですか?」
「…フロウライト伯爵領内ならね。夕べ記憶を手繰り寄せてなんとか思い出したの」
そう言って私はごそごそと地図を取り出した。
「それこそ、エレスチャレ町とサンタクロース牧場近辺は、精霊が契約者を求めているはずだよ」
****
そう。エレスチャレ地方は貧乏。収入少ないフロウライト伯爵領内でも一際貧乏。
まず、その広さに比べ人口が少ない。しかも土地のほとんどが山で開拓されていない。
自然、精霊の生命サイクルも短く、魔獣も跋扈し、さらに人が住みづらくなっている。
アカハナトナカイはそんなエレスチャレの自然が残してくれた財産だ。
私は地図に大きく印をつけていく。
「この辺りが野生のアカハナトナカイのいるところ…。メスがハナコだけだと心もとないから、いずれまた新しいトナカイを連れてこようと思っていたの。その森も、空晶みたいに契約しやすい精霊がいるはず…。あと、盲点だけどエレスチャレ町の原生林」
フロウライト伯爵領内だけで八体の精霊がいて、エレスチャレ地方は内三体がいた。
エレスチャレルートでは戦争イベは「決闘」を回避しやすいルートだった。
…貧乏設定の温情だったかもしれん。精霊契約自体はゲーム的にはさほど難しい作業ではなかった。
ヒロインのパラメータあげて、祠で呼び出しだけだったから。
でも、実際に空晶と契約して、そんな単純じゃないのはわかる。祠もないし、ゲームでは精霊があんな苦しんでいる表現もなかったし。
「必要ですか? 空晶だけでも充分…危険なのに」
「私が狙われるってこと? う~ん、それは今更だし。それは、空晶と契約する前にかくごしたもん。アンダリュサイト女子爵にまでなっちゃったから、いっそ、エレスチャレ地方すべてをしょうあくした方が安全だと思うの…」
言って、私はスピネル君をじっと見る。
「なんか、セルカドニー侯爵はキケンな匂いがするから…。どう?」
「…スマラルダスに相談しますよ」
スピネル君の返答に私は頷いた。




